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忙しそうなので、話したいのは山々だったけど、笑顔に見送られて企画部を出る。課長には、手違いで呼び出すような形になったことの謝罪と、また直接大倉さんが来られるということを伝えた。

「さっき本人からも連絡があったわ。流石に肝入で入ってきた人が、そんなに行き届かん人やとは思ってなかったけどな。」

よぅ言うわ。あんなに苛ついとったのに。

「余計なことを言ったのは時期部長候補やろ。あいつ性格ひん曲がってるからな。よぅ社長が我慢してるわ。」

僕も思いついた企画部一課の課長。営業との会議のときも、嫌な印象しかない。

「でもまあ、あのくらい適当にあしらえんとやっていかれへんからな。」

「それはそうですけど、こんな露骨な嫌がらせあります?」

「男の嫉妬は怖いからなぁ。お前も気をつけろよ。」

「私ですか?」

「そーや!お前モテるから、知らん間に揉め事の渦中におるかもしれんで。」

「え?モテませんけど。」

「はぁ。嫌みなやつやなぁ。はいはい。仕事仕事。」



「マルちゃんて呼んでええの?」

「ん。」

「なぁ。なんでこんな吸い付くような肌してるん…たまらんな…」

「ね…めちゃくちゃにして?」

あの日襲われて以来、昔を思い出して寝れない日が増えた。村上さんには何でかバレて叱られるんやけど、でもどうしようもない。

自分の頭の中に渦巻く嫌な気持ちを、自分の叫び声でかき消す。だからもっと、もっと激しくして…



「先生!」

「丸山さん、今日はありがとう。ゆっくり観ていって。」

「はい!」

安田先生の個展。入り口には先生が自分でデザインしたポスター。世界観がすでに出来上がっている。

「わ…」

初めて手が届く距離で見た先生の作品たち。こんなにも命があるように見えるもんなんだ。すべてが生き生きと、個性豊かにそこに存在している。

「丸山さん。」

「あ、大倉さん…じゃない、大倉課長。」

「ふふ。やめてください。なんで言い直すんですか。課長は余計です。今はオフですから。」

もしかしたら個展で会えるかもという連絡はもらっていたけど、普段着の大倉さんは久しぶり。というか会うのが久しぶり。

「少し落ち着いてきたみたいですね。営業部にも大倉さんの手腕が伝わっていますよ。」

「はは。最初は大変でしたけど、丸山さんがあの時来てくれて助かりました。まさか同じ会社で働けることになるなんてってテンション上がったし、予防線をはれたというか、先回りして行動出来たので。」

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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時

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