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「とりあえず仕事頑張れる?夕方また話しよう。いける?」
「仕事はちゃんとする。」
「わかった。連絡入れるし。頑張って。」
村上さんの落ち込んだ背中は初めて見た。とりあえず、横山さんに連絡しよう。
「すまんな、マル。」
「村上さん、めっちゃ落ち込んでましたよ。」
仕事の合間に横山さんに連絡。メッセージに内容をまとめて送ると、すぐに電話がかかってきた。
「まさか見られてたとは思わんかった。」
「じゃあほんまなんですか?」
「いや、あの人目が不自由で、横断歩道で危なっかしかったら助けただけや。手を繋いだというか、腕を支えただけやで。」
「なーんや。村上さん、めっちゃ早とちりやん。」
「俺、そんなことせーへんし。…でもまぁ、あいつはすぐにそう思うかもな。気をつけるわ。」
「じゃあもう任せていい?」
「ん。助かったわ。また礼はする。」
「ええですよ、そんなん。」
横山さん、なんか格好いいな。村上さんのこと、めっちゃわかってる感じ。
「何をニコニコしてるんですか?」
「わっ!お、大倉さん?」
「はい。今帰りですか?なんかあった?」
「あ〜ふふ。実はね。」
大倉さんに今日のことを話す。二人の仲の良さを共感してほしくて話してたんやけど…
「あのさ。それ、俺が聞いていい話ですか?」
「へ?」
「だって、それ、アウティングじゃない?」
「ハッ!あー!しまった!!」
「ん〜…丸山さんには秘密事は話せませんね。」
「わ〜…どうしよう。大倉さんにはつい何でも話してしまって…。あ〜…僕、あほや…」
「ははは!すみません、意地悪な言い方して。大丈夫です。俺も何となくそうかなぁって思ってたし。」
「…そうですか?」
「はい。何と言うか、夫婦みたいやなって思ってました。」
「そうでしょ!!」
「ふふ。はい。」
「なんか運命を感じるんですよね、二人には。」
「運命か…いいですね。」
穏やかに受け入れてくれる大倉さんにうれしくなる。
「大倉さんがそういう偏見のない人でよかったです。」
「ありそうでしたか?」
「いえ。だから自然と話してしまったんだと思います。」
「そう。ならよかった。俺も、丸山さんがそういう偏見のない人でよかった。」
「ありそうでした?」
「いいえ。」
「ふふ。ならよかった。」
大倉さんが二人を受け入れてくれたことがうれしい。いや、同性の付き合いに偏見がないことがうれしいのか…だからってどうというわけではないんやけど。
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作者名:orange | 作成日時:2022年12月27日 14時