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「とんでもない。こうしてきちんと迎えに来てくださったのですから。」
「そう言っていただけると助かります。それから、先日は急にあらわれた上、兄上様には失礼の数々、申し訳ありませんでした。」
「いえ、弟に再び会わせていただけたこと、感謝してもしつくせません。」
みんなが揃えて忠義様にお礼を言ってくれる。忠義様がとてもお優しい目でみんなを見つめ、最後に俺に微笑みかけてくれる。
「では、改めてご挨拶を。わたしはここより西、タシューという国の王子です。直接的な交流はありませんが、隣国のパーティーなどで噂される隆平様のことが気になり、伝手を使ってこの国が参加される集まりに顔を出しておりました。」
「タシュー国のように遠い国から、よく弟を見つけてくださいました。」
「奇跡の出会いをいたしました。命をかけて大切にしたいと思っております。どうか、隆平様との結婚をお許しください。」
「忠義様、弟を大切に思ってくださりありがとうございます。末長く、よろしくお願いします。」
兄上の言葉を聞いた瞬間、涙が一気に溢れる。
「マ、マル!?」
涙が止まらず声が出ない。驚いて慌てている兄上に何か答えないといけないのに…
「隆平様。」
忠義がそっと肩を抱いてくださる。
「あなた、マルはうれしいのですよ。誰よりも尊敬するあなたに結婚を許してもらえて。ね、マル?」
ヒナ様がいつものように助け船を出してくださった。
「ウッ…はぃ…ありがと…ございます…兄上…」
「マル…お前がこんなに感情豊かに自分の気持ちを出すなんて…」
「あらあら。珍しい。あなたの涙は久しぶりね。」
しばらく2人で泣きあって、涙がおさまる頃に、弟2人が喜びの声をかけてくれる。
「マル兄様、おめでとうございます。」
「マル兄様、幸せになってくださいね。」
「ん。ありがとう。」
笑顔の2人。でもすぐに、今度は少し寂しそうな表情をする。
「どうした?」
「マル兄様、遠くの国に行ってしまわれるのですか?」
「あ…」
それは考えていなかった。自然と忠義様の方を見ると、軽く頷いて話を引き取ってくださる。
「兄上様、わたしはタシュー国の王子とはいえ、三男坊の気楽な身。王位継承は長男と決まっております。もし許されるなら、こちらで何かお手伝いできることがあればと…」
「え!ゆう兄様!手伝っていただきましょう!」
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作者名:orange | 作成日時:2022年1月30日 19時