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緑サイド
会社のこと、家族のこと、色んなことがある中、俺は迫り来る犯人との面会に憂鬱になっている。ほんまは会わせたくない。でも隆平の強い想いを知ったから、頑張って支えないと。
「隆平。」
「忠義、ごめんな。」
「え?」
「心配してくれてるんやろ?」
「うん。バレた?」
「ふふっ。うん。僕の大事なパートナーやもん。大事やのに、こんな表情にさせてしまって申し訳ない。」
「はぁ。まぁ、とりあえずはマジックミラー越しやしな。」
「うん。よろしくお願いします。」
そしてその日はあっという間にやって来た。みんなが心配してくれたけど、お父さんと奥さんが一緒に来てくれる。
「刑事さん、今日は無理をお願いしてすみません。」
「いえいえ。隣の部屋ですから危害を加えられることはありません。向こうに姿が見えることはありませんし、話し声程度なら聞こえませんから、様子を見てみてください。」
「はい…。」
刑事さんを含め、5人で部屋に入る。向こうからは鏡になっているところから取り調べ室を見ることが出来た。怪しまれないように、数日前から同じ部屋で取り調べがされているらしい。
「では、取り調べを始めます。」
ドアが開く。想像以上に背の高い、如何にも紳士的な男性が現れた。囚人服やのに…怖いくらい気品がある…こいつが…。
「はっ…」
息を飲む隆平。咄嗟に背中を支えるけど…震えてる。こいつや…うちに来た奴や…
「大丈夫?」
「う、うん。」
「忠義くんも大丈夫か?」
「え?」
「震えているから…。」
ほんまや…手が震えてる。
「忠義…手…」
「うん…」
俺も怖いんか…。いや、怒りかもしれへん。とにかく、お父さんが居てくれてよかった。
「お父さん…すみません…」
「大丈夫。私も妻も、刑事さんもいるよ。」
「はい。」
隣の部屋では淡々と取り調べが行われている。でも、犯人の話しは支離滅裂で、途中で途切れたり、笑いだしたり、酷いものだった。そのうちふと上を向いてうわ言がはじまる。
「隆平…」
「えっ…」
「隆平…隆平…」
「はっ…忠義…」
「隆平、しっかり!え…」
犯人がマジックミラーの方を見つめている。怖いぐらいはっきりと。その視線の先に…隆平!
「隆平!見るな!!」
「ハァ…こっちに…来る…」
お父さんもお母さんも小声で必死に呼びかける。その時、犯人の声が聞こえてきた。
「隆平。そこか。」
「え!?」
まっすぐこっちに来る…そんなこと…
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作者名:orange | 作成日時:2021年3月26日 22時