４３話 ページ44
─ノースside─
４日目の夜明け前。名残惜しいけど約束があるから仕方ない。
オヤジさんの部屋を後にしてまた甲板に寝落ちしてたエースを連れて一緒に寝た。ここに居る間は毎日そうしてた。そーじゃないとオヤジさん許してくれなかったからね。
元々三日間だけの約束。まだぐっすり寝てるエースを起こさない様に静かに出て来た。早朝だから起きてる人はほとんどいないけど、皆から激励と別れの言葉は昨日貰ったし見送ってくれる人がいるだけ嬉しい。
「本当にもう行くのか？今からでもエース叩き起こしてくるぞ？」
『いーんですよ〜、これで最後って訳じゃないですから。今は眠らせてあげて下さい』
「お前さんが良いなら構わないが...またエースが怒るんじゃないか？」
『エースは寂しがり屋ですからねぇ。でもエースにはたくさんの兄がいますから。優しいおにーちゃんが宥めてくれるでしょ？』
「はは、そうだなァ。ウチの末っ子たちは仲が良すぎて喧嘩しちまうらしいから困ったもんだ」
そう言って微笑むイゾウさんはとても綺麗だ。潮風に吹かれる黒髪はサラサラでキラキラしてる。
結っていない髪と化粧をしていない素顔は３回目の呑み勝負で賭けたお願いだ。いやマージで美人さんよホント。黒髪美人は着物が似合いすぎるな...。
この３日間毎夜賑やかな宴だった。呑んで食べて騒いで笑って、能力の見せ合いをしたり彼らの冒険譚を聞いたり、本当に楽しかった。
エースに会う為だけにここに来たのに、まさかこんな仲良くしてくれるなんて思わなかったなぁ。家族以外の人にこんなに気を許すとも思ってなかった。オヤジさん限定だろーけど。
白ひげ海賊団がどんな人間たちなのかを知れたから安心してエースと離れられる。
「ノース、夜明けだ」
イゾウさんの声に視線を東に向ける。水平線から眩しい光が差して海面に道を作る。その先で愛船が波に揺られていた。繋がれた小舟の一隻には皆から貰った物がたくさん積まれてる。当分の間は退屈しなさそうだ。
時間ですね、と返して船に飛び降りた。置いてあった帽子を被って振り返る。
『お世話になりましたー！"白ひげさん"に改めてお礼言っといて下さーい！』
「あぁ、了解した！また遊びに来い！次は勝たせてもらうぞ！」
『次も負かしてやりますよー！では、また会う日までお元気で！』
この海賊船に不幸が訪れない様に、"家族"が悲しまない様に。
そう願わずにはいられなかった。彼らは余りにも優しくて、温かい。
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
