１７話 ページ18
─ノースside─
『軍曹ちゃん、援軍要請きた。
「３番と４番が通常業務中です」
『両部隊に連絡して。自由に動いていいけど自分の命最優先で』
「ノース中将は行かれないんですか？」
『うん、残る。だから軍曹ちゃん行ってきてくれる？私の代理で』
「え、私がですか！？」
『きみが一番近くで私を見てきたんだ、誰よりも適任だよ。コート、貸すから絶対返しに来ること。できるかな』
「はいっ！！行ってきます！！」
『ん、気を付けて』
大事そうに私のコートを抱える彼女を見送って机に項垂れた。正直身体が限界を迎えてる。寝不足で視界が霞んでるし気を抜くと意識が飛んでる。残りの書類は数枚程度、これから受け取るであろう分を含めても今日中に全て終わるはずだ。少しだけ休憩をしても問題ない。こんなに根を詰めたのは久しぶりだな。何をしていたのか思い出せないくらい働いて、早く早くって、入隊したばかりもこんな感じだった気がする。
コンコンッ
「おれだけどー、入るよー」
『どうぞー』
返事も待たずに入って来たのは大将青雉ことクザンさん。額のアイマスクは最早彼のチャームポイントだ。あれないとパッと見で誰か分かんない時あるんだよね。９割冗談だけども。
項垂れてた身体を起こして背もたれに預ければ私の目線に合わせてしゃがんだクザンさんと目が合った。
「あーらら、ホントに酷い顔してんね」
『もう終わるんで大丈夫ですよー。クザンさんはサボりですか』
「違うって。ノースちゃんが無理してるって聞いたから心配で来た訳よ」
『まぁ、そういうことにしてあげます』
「ホントなのに。で？今回は何でこんなに生き急いでんの？」
『人を死にたがりみたいに言わないで下さいよ』
「そんな表情で言われてもな。近頃の海兵たちはノースちゃんのことで持ちっきりよ、みんな心配してんの。まー、あれだ。何かあんならおれ口堅いし言ってみてもいーんじゃねーの？」
クザンさんが本気で私を心配してるのは最初っから知ってる。海兵たちが心配してるのも。体調が安定しないせいで"声"が不意に聞こえてくるから。
いつもは気怠そうなのに真剣な表情をしてるもんだから笑えてきてしまった。
『そーですねぇ、クザンさんになら言ってもいーかもなぁ』
「任せなよ、墓場まで持ってってあげるから」
『んふふ、そんな大層な事じゃないですよ』
『旅に出ることにしました』
「マジで...？」
▽
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作者名：えると。 | 作成日時：2022年9月2日 22時
