八話 ページ10
「頭痛いぃ……、関節が痛いぃ……、筋肉痛がつらいぃぃ…」
口に体温計をくわえながらソファーに横たわったAがうわごとのようにつぶやく。
結論から言えば、おじさんのブラックだだしい店で働いて約一週間も経って、倒れた。
「あー、やっぱり倒れたか。大丈夫だ。そのうちリミッターでも外れるだろ、あと体温測ってんだから喋んなよ。安静」
「こっ…、この、薄情……者……」
息も絶え絶えに呟いた俺は、なんとなくこのおっさんがやけに筋肉質なのか理解した。嘘だろ。成長期真っ盛りの高校生が倒れるものを一人で…？考えただけでも自分が非力なのを思い知らされてつらい。
「あ、そーいや最近、常連からこれ貰ったんだよ」
ほら、と言いながら半分屍状態の俺の目の前でブラブラと何かが揺れる。目を凝らしてよく見るとどこか凝っているチケットがあった。
「ナイトレイブンカレッジのマジフト大会のチケットらしいぞ。俺は興味ねーんだが、どうだお前行ってみないか？」
大事な従業員こんな姿なのにまだ動けというのかこの鬼は。
「やだね。俺、疲れたもん。たまにはゆっくり休みたいんだよ」
当てつけでそっぽを向こうとすると、後ろかどこかおじさんの困ったような声が飛んでくる。
「あー困ったなぁー。このチケット結構有名なものなんだけどなー。残念だなー」
「俺、関係ねぇし」
「いや、ついでだから本当に商品販売してきてくれないか？宣伝にもなるしよ」
意地でも俺は行かねぇよ。と逃げるように布団の中に籠ろうとするが、「A」という優しい声が響いた。
雷に打たれたようにAに身体が大きく震える。
こちらに視線を向けてきたおじさんが、柔らかい笑みを浮かべていた。しかし、その目はこれっぽちも笑っていない。
「だめだろ、お客さんの善意を受けないなんて。それにこんな大チャンスなのに、どこぞの馬の骨に取られるなんて、俺は許せねぇよ。なぁそうだろう？」
「そ、そうだけど、おじさん………。俺体調が……」
先ほどまで意地を張っていた俺の表情からみるみる血の気が引いていく。
「A」
おじさんは優しい笑みを浮かべながら、今すぐ布団の中に避難しようとする俺の手を掴み顔を近づける。地の底から響くような声が乾いた部屋の空気を揺らした。
「そこまで噛みつくんなら、上等だ。毎日出勤にしてやんよ、どうだ？嬉しいだろ？うん？」
「ひっ」
Aは小さな悲鳴を上げた
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
