十一話 ページ13
「嘘だろ……」
不意に出てしまったそんな言葉、目の前で消えていった食材たちを眺めながらツタはこちらを変なものを見るような目で見てくる。いや、実際にヤバいのはお前だろと思いながらもジジイにどう言い訳すればいいか考える。
「ま、まぁ。セルフサービスで売ってたって言えばなんとかなるかなぁ……」
そういう思考にふけっていた直後、
「パレード目掛けて突進してくる奴らがいるぞぉぉー！！」
観客の怒声があたりに響き渡った。
「逃げろおおお！！押しつぶされるぞ！！」
「キャー！！」
人々が右往左往し、あちらこちらから悲鳴が上がる。
「おい。なんの騒ぎだ」
Aは周囲を見回す。すると、前方から人だかりを関係なく駆け抜ける、人の群れがいた。俺は目をこらして、前の方を見る。
客の群れの目の前には年端もいかない男の子のすがたがあった。男の子は地面にへたり込んだまま動かない、おそらく恐怖が膝に来たのだろう。
ガタガタを震える男の子が人の群れに押しつぶされそうになった時。
「行け」
Aの号令と共に、植物達がほぼ同時に動く。
人々が男の子をひくよりも早く稲妻のようなものが一瞬地面を駆け抜け、巨大な木の壁を立てる。
パニックになった群衆と男の子を隔てる木の壁は、どこか異様なオーラを放っていた。
安堵したAは、男の子に向けて視線を戻す。
よく見ると赤毛の少年だ。頭部に小さな獣耳が生えている。少年はほとんど顔面蒼白で恐怖でぶるぶると目じりに涙を溜めて、動かない。
俺はそんな少年の目線に合わせるように屈み声をかける。
「どうしたんだ、迷子か？家族はどうした？」
「は、はぐれちゃ、って……おじたんに会いに来ようと思って…」
「お、おじたん？？、まぁいいや。名前は？」
「チェカ……」
「そうかチェカ。もう大丈夫だ。怖かったな」
俺はチェカの頭をできるだけ優しく撫でる。そうすると、安心したのか張り詰めた表情が崩れ大粒の涙がチェカの瞼を超えた。
目の前で声を上げて泣くチェカをどうすればいいか、分からず。取り合えずそこら辺の小さな民衆に押しつぶされて枯れた花を目の前に見せる。
「見とけよ」
そう一言残し、俺は軽く息を吸う。
俺は幼少期の頃。母が歌ってくれた子守歌を優しい声で歌う。その瞬間、枯れていた花は一気に成長し美しい花束になった。Aの歌声に泣いていたチェカも目を見開いて聞き惚れている。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
