十話 ページ12
「じゃあ、後は頼みましたよ」
アズールとかいう男が持ち掛ける隠されてこちらが不利になる商売話が終わり、彼がAの視界から完全にいなくなったころ。
Aの舌打ちが響いた。
「あのやろー……、ジジイ騙してうちの店乗っ取るつもりだったのかよ」
Aは低くこもった声で言う。
椅子の上で不機嫌に食材を出す俺の、ただならぬ気配を感じたのかAの店の周りを人々避けて通った。客も今んとこ来ない店で男は人が通るたびに眼球だけを動かして様子を見る。
改めて見ると、ジジイの言った通りここには色んな人種がいる。
獣耳が生えている少女に、人外とも見える男。大体の人びとの頭髪の色は前世の東京でしか見たことのない派手な色あいだ。その中でも店の真ん中で不機嫌に、黒髪、黒目のこの世界では珍しいともいえるのかAは、やはり一人だけ浮いて見えるのだろう。
不機嫌な俺を伺ってか、近くの植物達が俺のことを心配するようにすり寄ってくる。
ジジイの所で働いてからわかったことなのだが、この植物達常の俺の行動を観察しているようで。俺が一回皿洗いしている間に手が滑って一枚落としたことがある。やっちまった、と思って床を見ると蜘蛛の巣のような網目のツタが皿が地面にあたる寸前にキャッチしていたのだ。
歌ってもいないのになぜ、と思いながら不思議に見ていると、その皿を安全な食器棚に戻したツタは、褒めて！と言うようにユラユラと目の前で揺れている。
「あ、ありがとうな」
戸惑いながらも撫でてみると、これまた嬉しそうに暴れだして急成長し、近くの棚にツタがあたり、新品の皿五枚ほどを割ってしまうという大惨事まで起こしたのだ。そのあと俺はジジイに呼び出されて正座になりつつ説教される始末。俺、褒めただけのに…。
そんなこともあって、俺的の解釈ではかなりこいつらは俺に懐いていると思う。一方的に。そこで一回歌ってみたのだが俺が歌ったことで操れるものは植物達だけであって、その他の炎といったものは操れなかった。しかし前の自分が生み出した炎は制御可能らしい。
「お前らって何食べるんだうろな」
目の前で売れ残っている食材たちを見て、俺の肩らへんにいるツタがどれを選ぶのかと質問を問いかける。するり、と俺から離れて食材の目の前まで来たツタは、迷う素振りは一切見せず
ぱくん。
そんな言葉で済まされるほど、俺の目の前にあった大量の食材は姿を消した。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (
レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです！！！！！！ (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです！ (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねっとり | 作成日時：2022年1月20日 16時
