三十二話 ページ34
そのあと彼は何も言わなかったし、俺は警戒しながらもその場から去った。
しかし、やはり変わらないのはジャミルさんはカリムさんの優秀な従者ということ。
カリムさんは元々の性格がいいのか、なんのか。人を疑うことを知らない。それも彼の魅力なのだが、カリムさんが地位の高い人だからこど一般人とは違う殺意の目に彼は気付いていない。
紅茶などに毒が盛られているのかもしれないのに、ましては夜中暗殺される危険も。誘拐もされたこともあるカリムさんがいつも通りに暮らせるのは紛れもなくジャミルさんのお陰で、彼が少なからずカリムさんのことを嫌っているのは、カリムさんの性格にあると俺は判断した。
だからそんなカリムさんに、二人でいるうちを狙って俺は釘を刺した。
「カリム様、今のスープ。毒ってことに気が付きましたか?」
もちろん嘘だ。第一出される前にフロイドには許可を貰ってるし、俺の植物達も毒とは判断していないし、完全においしいスープだ。
バッとカリムさんが俺を見る。その表情は唖然と言った方が正しくて、自分が好いてる女が突如そんなことを言うのだから驚くはずだろう。しかし俺は言葉を続ける。
「あはっ、嘘ですよ。しかし、もし飲んでいれば今頃は全身に痺れが回って倒れていますし、いずれ、食事もとれない身体が手に入ります」
ケラケラと笑いながら続ける俺は、やはりその場では異様に見えていたのだろう。カリムさんの額から汗が滴り床に大きいシミを作った。
「それを、貴方。ジャミル様がなされていることをご存じですか?」
にこっと首を傾げて問いかける俺にカリムさんはやっと気づいたのか息も絶え絶えな様子で口をぎゅっと閉じた。
「例え、どんなに毒の耐性があったとしても、最悪の場合も考えられます。毒見とは、非常に危険な行為でございます。それ故、弱い程度の毒ならば、耐性が効きすぎている毒見が気づかない場合がございます」
俺はそう言って、未だに府向いて上げないカリムさんの耳元に口を寄せる。
「なぜ、人が中々死ねないかわかりますか?死に対する恐怖を感じて、死ぬ勇気がないからですよ」
それをカリム様のために死ぬという行為は、中々出来るものじゃありません。と俺は低く耳元で囁く。
「自分が、お命を狙われているということを、ゆめゆめ忘れないようにしてください」
軽く覇気を滲ませてそう言う俺に、カリムさんはガタガタと震えて頷いた。
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レオ - とっても面白いです。続きが気になります。 (1月4日 8時) (レス) @page48 id: 8c9a5c91e3 (このIDを非表示/違反報告)
夕闇柳 - たまたま30話見ていてカリムがカルムになっていました。 (11月25日 8時) (レス) @page31 id: a9dd4c9262 (このIDを非表示/違反報告)
ウイ(プロフ) - ふぎょあ、完結されてるんですね…この作品、めちゃ好きです。まだ占ツクにログインしてなかった頃、読みまくってました笑 ねっとり様に届くか分かりませんが、更新、お疲れ様でした。ほんとに本当にこの作品がこれからも大好きです!!!!!! (6月26日 7時) (レス) @page48 id: 154e73901c (このIDを非表示/違反報告)
ねっとり - 雨中猫さん» アカウントを作っていなので急遽この形ですが作者です。コメントありがとうございます。「命に嫌われている」素敵ですよね、番外編でも他の歌とかも書いてみたいので気長に待ってくれると嬉しいです (2022年2月5日 23時) (レス) id: ad0790befa (このIDを非表示/違反報告)
雨中猫 - 主人公ちゃんに命に嫌われている歌ってもらいたいです! (2022年2月4日 19時) (レス) @page27 id: 79b86edfa1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねっとり | 作成日時:2022年1月20日 16時