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「お前さぁ、今いいとこなんだから出てくんなよ…」
ぺしり、と悠仁が自分の右頬を叩き、宿儺を引っ込める。
しかし反対側に目と口を出したそいつは、また不気味に笑った。
「小僧を投げ飛ばしたそこの女」
「私の事?」
「お前しか居ないだろう。名乗れ」
どうやら興味の対象はAらしい。何故だか分からないけど、悠仁を投げ飛ばしたという理由だけでは無さそうだ。
不審そうに眉を八の字にした彼女は、伏し目がちに名前を呟いた。
「藤沢、A」
「………ほぅ?“藤沢”か」
「何、お前こいつと知り合い?」
「そんな訳があるか。こんな小娘と話すこと自体数百年ぶりだ」
そう言ってまたケヒヒと宿儺は笑い出す。
…全くもって分からない。Aの反応的にも、2人が会話するのが初めてだというのは本当の様だし、敵意や殺意のようなものは微塵も感じられない。
意図が読めないことが余計不気味に感じる。
「宿儺は私のことを知っているの」
「知らん。俺が知っておるのは貴様の先祖だ。何百年も前のな」
「…へぇ」
どうやらその事にこの場の全員が呆気にとられたらしい。
Aの家が加茂家の超遠縁で細々と続く呪術師家系であることは知っていたけど、そんなに遡れるほどの家だということは知らなかった。そしてAも初耳らしく、伏せていた目を丸くさせている。
流石千年もあり続ける呪いの王。歩く日本史教科書とでも言うべきか。
でもただ単に古くからある呪術家系っていうだけじゃ宿儺が興味を持つこともないだろう。
1人で愉快そうに、納得がいったかのように口角を上げているそいつは、少し目を見開いてAの顔を眺めて、一言。
「まだ絶えていなかったか…忌み血の巫女は」
ピクリ。
Aの肩が動き、空気がまた張りつめる。
忌み血って、なんだ?そいつの血は忌むべきものなのか?巫女家系というのは知ってるけど、ただの巫女じゃないのか?
彼女の顔を見れないまま、言葉の解釈が出来ないまま、誰かが言葉を紡ぐのを待っているだけの時間が過ぎる。
「己が目で見たぞ。先祖がその血で犯した忌み事を」
「…成程、それで“忌み血”?案外間違ってないよ」
凛としたいつも通りのAの声が空気を震わせた。
それと同時に、緊張の糸が解けたように僕と1年3人は彼女に視線をやると。
戸惑いを見せることも無く、Aはさもノーダメかのように涼しい顔をしてそこに佇んでいた。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時