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結局あの日何があったのか彼女から聞く間もなく1週間程が過ぎ、その頃には以前とほぼ変わらないAが居た。
目が合わなくなった、ということを除いて。
「そりゃお前と目すら合わせたくないんだろ。
…って言いたいところだけど、私とも合わなくなったからなぁ」
僕が信頼している校医は、珈琲の缶を片手にフゥと息をついた。
ベンチに並んで座っている僕達の視線の先では、噂の当人がグラウンドで1年の体術の稽古を付けている。
「独り言とはいえ、アイツがあんなこと言ったんだよ?」
「確かに、あれから研究協力もぱったりと無くなったし、まあ十中八九そこで何かあったんだろ」
「だよね〜それが何なのかって話だけどさ」
「分かんないから私もお手上げなんじゃないか」
それでも怪我をしなくなったことに安堵していた硝子は、とても後輩想いな人間だと思う。数少ない女呪術師だから余計目にかけているのかもしれないけど。
その時悠仁の身体が宙に舞った。
というか投げ飛ばされた。Aの手で。
「上層部が絡んでるってなると、あの子良いように利用されてるだけなんじゃないか?」
「…だろうね」
「お前しか助けられないんだぞ、五条家ワンマン当主」
「そのワンマン当主は自分じゃ結婚相手も選べないんだけどね」
「お前がクズなだけでAは類を見ない優良物件だろ――― 」
「あー悠仁助けてこよっと」
「話を聞けクソ五条」
ゆーじだいじょーぶかなー、と白を切って歩き出すと、背後で盛大に舌打ちをされた。硝子は短気だなぁ。疲れてるのかも。
確かに助けることは出来ると思う。「僕の婚約者(仮)に手出しするな」って腐ったミカン達に圧をかければどうにでもなるだろう。
でもそれじゃAへの風当たりは強くなるだけだ。その上僕との婚約破棄なんてことになったら後ろ盾は無くなるし、僕が介入することも出来なくなる。本人も望まないだろうし。
流石にこの僕でも、買ってきた金魚を濁流渦巻く大河に放流するような酷なことはしない。幾らその金魚が“僕”という水槽の環境に依存していなくても。
「派手に飛んでたね〜悠仁〜」
「いてて…あ、五条先生。Aさんの何処にこんな力があんの?」
「アイツは呪力制御がずば抜けてるから、身体を強化するのは人一倍上手いよ。仮にも1級だし」
そんな無愛想でゴリゴリの1級金魚、買いたくて買った訳じゃないけど、自分の水槽に入れていれば愛着が湧くのは当たり前だったのかもしれない。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時