【呪術廻戦】目の前の最強さん

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ふぅ、と胸に溜まっていた空気を吐き出して、チッチッと規則正しく動く壁の時計を見つめる。



「他にどんな事聞かれた？」
『最後に会ったのはいつなのかとか、学生時代関わりはあったかとか…そういえば、あの3人に恨みを抱いてそうな人物に心当たりはあるかって』
「恨み、か」



殺し方の残虐性からそう判断されたのだろう。想定内の質問ではある。
3人の学生時代の様子は警察側も把握しているはず。萩野が聞かれたということはそれまでの他の人の聴取でも同じ質問をしていたのだろうし、恐らくその時の私の立場も知っている。



『藤沢の所にはまだ行ってないんだろ？大丈夫？』
「大丈夫も何も…私にもあの3人の現在がさっぱりだったんだから、疚しいことなんて1つもないよ」
『分かってるけど…犠牲者が犠牲者だから』
「それも大丈夫。心配してくれてありがとね」



学生時代の傷が完全に癒えていたわけではない。負の感情が綺麗さっぱり無くなっていたわけでも。
それでも“呪術師”と“非術師”の線引きは自分自身出来ているし、「あの頃の私は虐められても仕方がなかった」と理解している。きっと疑われるだろうし萩野がこうして心配してくれるのも分かるけれど、その点に関しては本当に大丈夫。3人が死んでしまったのは私が手を下したわけでも、望んでいたわけでもないし。

カツカツ、と幾つかの革靴が床を叩く音が近付いてくる。そして談話室のドアをガラリと引いた。



「…噂をすれば、らしいよ」



じゃあまた、と電話を切ってポケットに仕舞い、穏やかに入口を振り返る。



「藤沢Aさんですね。署でお聞きしたいことがあります」
「話は聞いています。帰る、と母達に伝えてきますね」



スーツ姿で身分証を掲げた人達に軽く会釈をし、そう離れていない病室に向かった。
そっと開けたドアから顔を出すと、中に居た2人は振り返った。



「ごめん。緊急任務入ったから行くね」
「そう…気をつけてね」



心配そうな母の横で顔を顰めた五条さんは、廊下で待つあの人達に気付いているのだろう。「嘘をつくな」とでも言いたそうではある。



「大丈夫ですから。後で話します」



本当に大丈夫。今回の一件、私と無関係な訳では無く、寧ろトリガーとなったのは私自身だと薄ら気付いてしまっているけれど。
でもだからと言って、五条さんに迷惑をかけるような問題ではない。これは私1人の問題だ。



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