【呪術廻戦】目の前の最強さん

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至極真面目な表情でそう聞くものだから、問いを向けられたその後輩は珍しく言葉を詰まらせた。



「…何故私に聞くんです？」
「分かんないんだよ、これ以上Aを苦しめずに済む方法が」
「だからって私に聞かないでください。ご自身が思うように向き合えばいいんじゃないですか？」



その正論に深く頷く。ごもっともだ。今までの言動の後始末くらい自分で考えてすべきだ。それが誠意というものだろうに。私に尋ねようものなら「知るか」の一言で追い返していたのだから、五条は七海に感謝すべきだ。



「…1つ言っておきますが、彼女は学生時代からずっと、自分を見下す貴方を見返すことは出来なくても、僅かでもいいから呪術師として認めてもらいたいとあそこまで強くなったんです。
もちろんそれが呪術師であり続ける理由の全てでは無かったようですが、まあご参考に」



では私も任務がありますので、と七海もスーツを羽織って颯爽と職員室を出る。こうして私とぶすくれ五条だけが取り残された。



「お前の心情にどうこう口出すつもりは無いが、手が届かなくなる前に動けよ。もう後悔したくないんだろ」



返事は無い。だが無言は肯定、大方既に後悔している途中なのだろう。手間のかかる奴だ。
七海の言っていたことは、正直私も知らなかった。Aの眼中には五条のことなんて1ミリも無いのだと思っていたから。そこまで重たくのしかかっていたと言えばそうなのかもしれないが。
でもあれが本当なら、五条があの子のことを認めてやれば“呪術師であり続ける理由”とやらが1つ達成されるのだろう。呪術界からまた足を洗うまでいかなくとも。

白衣のポケットに入っていたスマホが着信を告げる。どうやら急患が来たらしい。今日も朝から激務が待っていることにため息をつくと、何気なく五条が口を開いた。



「案外当たってるかも。硝子が言ってた、“同期の仮説”ってやつ」
「………そうか」



じゃあ後はお前が素直になるだけだな。

そう言い残して私も廊下へ出た。10月らしく冷たさを秘めた空気が、胸の奥までもざわつかせる。
季節の変わり目だ。これからまた呪霊の発生が増えてくるだろう。
学生時代から怪我の絶えない後輩の身を案じて、患者の待つ医務室へと足を早めた。


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