【呪術廻戦】目の前の最強さん

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案の定一足先に任務に向かったAと伊地知を見送った後、私達3人は誰からともなく大きく息を吐いた。



「本当にただの過呼吸だったんですか？」
「倒れたこと自体はね。何があったのかはさっぱり」



そうなったきっかけは五条にも分からないのか。彼女の纏う温度が普段より少し下がった気がするけれど、まあ無関係と考える方が難しいか。
つい先日の補助監督の殺害が原因か？それでもあの子なら倒れるような取り乱し方はしないはず。可能性はゼロではないが。



「お前ら、権力乱用してでもAをこっちに繋ぎ止めろよ。杞憂だと思いたいが、嫌な予感がする」
「同感です。私もできる範囲で善処します」
「…うん」
「歯切れの悪い返事だな。この期に及んで“Aが嫌いだから”とか抜かすなよ。言ったらお前を実験体(モルモット)にするからな」



酷くなぁい？と素っ頓狂な声を上げるクズを横目に、七海は私と会話を続ける。



「前から気になっていたのですが、Aが呪術界(こちら側)に戻された本当の理由は何なんですか？」
「…さあ。上の人間の考えることは分からないけど、実験とやらに関係あるだろうな」
「あんなの御三家の血筋を手当り次第調べれば同じような家系出てきそうだけどねぇ」



確かになと頷くと、七海も何となくは聞いているらしく、眉間のシワを深くした。
何を焦っているのか後悔しているのか分からない。私達が知っているAの姿も恐らく彼女のほんの一部で、全体を見せようとすることは暫く先、または一生見せようとしないのかもしれない。弱みを見せたら死ぬとでも思っているのだろうか。
マグカップのコーヒーを1口飲むと、アイマスクをつけたまま天井を仰いでいる五条が思い出したかのように口を開いた。



「…言ったんだよね、アイツ、自分で自分のこと弱いって」
「え？」
「僕が追い詰めてること、全然気付かなかった。自分からああやって言ってくるまで。不本意だけど」



その言葉に私と七海は顔を見合せ、また五条に戻す。こいつにしては珍しく反省のようなことをしているらしい。何の心変わりがあったのか分からないけど、10年ほど経った今になってか。



「…今更です。Aはあなたの言葉におっ立てられて、逃げずに苦しんでいたんですよ」
「そうだったみたいだね」
「みたいって…」
「七海はさ、僕はこれからどうすべきだと思う？」


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