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「―――五条さんも来なくたって。飛んだ方が早いじゃないですか」
「あのね、そんなポンポンするようなものじゃないんだよ?」
「じゃあタクシー呼ぶなりすればいいのに」
「そんなに僕と出勤するの嫌なの?」
「それは五条さんの方じゃないんですか?」
「…僕は何となくだよ。好き嫌いは置いといて、たまにはこれもいいなぁってだけ。だめ?」
「駄目ではないですけど…もう好きにしてください」
そんなやり取りをしたのは10分程前。最後はため息混じりにAが折れたけど、昨日あんなだった彼女が少し心配でもあった。これでまたぶっ倒れられたら僕が怒られるし。硝子とか七海とかAの母親とか。
まあそんなこんなで僕達は今電車に揺られている。出勤ラッシュとやらでもみくちゃにされるのはまあ好かないけど、それは目の前のAも同じなのか憂いを帯びた視線を車窓に向けている。
『次は___、___ 』
何駅か過ぎて一際大きな駅に着くと、学生がぞろぞろと降りて変わるようにサラリーマンやOLらしき大人が乗ってくる。どうやら学校の最寄りなのだろう。更に濃くなった人口密度に逆らえることはなく、僕はドアにもたれかかっているAに覆い被さる形で密着することになった。僕にすっぽり収まった彼女は、周囲から見えていないだろう。
それでも触れないように所謂壁ドンの体制を保っていれば、Aは目を外に向けたまま分かり易く顔を歪めた。
「…我慢してよね、こうなるのは仕方ないじゃん」
「別にそれは気にしてません」
ポーカーフェイスが常な彼女にしては、そんな表情を表に出すのはかなり珍しい事だった。どちらかといえば七海よりも顔を澄ましている方だし、マイナスな表情だったら尚更隠すようなやつだ。
どうせまた昨日の事だろう。あれ以上何も言わないだろうからもう聞かないけど、Aが迷ったり苦しんだりしているとこっちも調子が狂うからやめてほしいけど。
「嫌じゃないなら、もうちょっと。この体勢キツくて」
世間的には壁ドンよりも肘ドンと言われる距離までくっつく。正直ここまでくっつかなくたって何もキツくはないけど、僕の腕にAが閉じ込められているかのような視界は安心した。
そんなことを考えているとは露知らず、彼女は「好きにしてください」と投げやりに返事をした。これ幸いとまた半歩近付くとAの香りが漂ってくる。
一緒に洗濯機を回しているのに、何故かAは優しい匂いがした。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時