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五条悟side
僕が散々吐き続けた言葉をAが口にした時、酷く後悔した。
彼女は「弱い」「呪術師なんて向いていない」「足引っ張るな」という僕の皮肉を諸ともしていなかったけど、傷付かない訳がなかったのだ。
いつの間にか暗示のような呪いとなって、その細い首に絡みついて締め上げていたんだと、今になって気付いた。
僕はただ、目の前で彼女が壊れていくのをもう見たくなかっただけなのに。それが裏目となったのか今のAは、以前のように危うい所に片足を突っ込んでいる様に見える。
ぽろぽろと零れる涙は、Aの心が崩れていくかのようだ。相変わらず僕は拭えなくて、その光景から目を離せないでいた。
朝の日差しが窓から射して、絨毯のように部屋に広がっている。けれど彼女の足元には僅かに届かなくて、慰めるかのような柔い風だけが肩よりも長い髪を撫で付けていた。
「くしゅっ…」
不意にAがくしゃみをした。続けて鼻水をすんすんと啜る彼女を見て、金縛りが解けたように僕の体も動き出す。風で体が少し冷えたのかもしれない。
椅子から立ち上がり、横たわらせた時に脱がせた上着をそっと差し出す。俯いた彼女が「すみません」と受け取った時、そのポケットから紙切れが落ちた。
「何かのメモ?」
「さぁ…」
どうやら本人に心当たりはないようで、上着を肩にかけて、小さく畳まれたそれを開いた。
「………ッ!」
何かに気付いたのか、Aは僅かに目を見開いた。
不審に思って僕も手元を覗こうとするも、すんでの所でそれはくしゃりと丸められてしまう。目を覚ました時には幾分と良くなっていた顔色がまた色を失っている気がする。
そして次は、弾かれたかのように何処かへ電話をかけ始めた。
「何があったの」
「まだ何も。私の勘が当たってなければ良いんですけど」
真横でその様子を見守っているも、コール音が続くばかり。誰にかけてるかも知らないけど、早朝だから大抵の人間はまだ寝ているのだろう。
Aもそう考えたのか、スマホをしまい一息つくと何処かへ行こうと腰を上げた。
「次は何なの」
「…朝食作ろうかと。その間にシャワー浴びて来てください。家戻る時間多分無いので」
まるで、さっきの紙や昨日の「助けて」の声すら元から無かったかのように、彼女は僕に顔を向ける。
変わらずに澄んだ瞳。でもその中には心の奥底に押し込んだ感情が渦巻いていて、僕は何も聞けなかった。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時