131 ページ31
Aside
眩しい。
意識が浮上した最初の感想はそれだった。
世界がグルグルと回って私を振り落とそうとしているのか。自然に対して喧嘩を売りたくなるほどに、橙色の日差しは私の閉じた瞼をもろともせずに眼球を射る。
目を開けることも寝返りをうつことも叶わない。金縛りではないけれど、今は瞼一枚ですら重たくて動かせないらしい。
でも、誰かがそばに居る。昔から知っているような人。
「―――散々嫌っておいて、今更離れないで欲しいだなんて」
自嘲じみた柔らかい声が、ぼんやりと耳に届く。
そうか、生まれてから最初に発達して事切れる最期まで残っているのは聴覚だから、こんな時でも唯一仕事しているのか。…なんて、聞こえてきた言葉の意味もそっちのけでどうでもいい事をまた考え出す。
誰の声だろう。これも夢の続き？良い夢なのか悪い夢なのかも分からないけれど、いっその事この微睡みの中でずっと…
そこまで考えて、意識はまた闇に沈んだ。
「ぅ…」
次に目が覚めた時には、身体は意志のままに動いた。
ゆっくりと瞼を持ち上げると懐かしい天井が広がっている。
何でここに？私が自分で来たんだっけ？と覚束無い頭をめぐらせていれば、前日の記憶がゆっくりと戻ってくるのが分かった。
この目で見た事、耳で聞いた事、胸が痛んだ事、その全てが本物で、どれも信じられない。
息を深く吸うと同時に鼻の奥がつんと痛くなって、溜め込んだ空気を無意識に
「何で泣きそうなの」
前触れもなく飛んできた、予想だにしない声。慌ててそちらに顔を向けると、勉強椅子に前後逆に腰を掛けている五条さんが私を見ていた。
まだ意識も視界もぼんやりとしているけれど、いつもよりトーンが温かい気がする。というか、なんでここに。
「電話全然出ないかと思えば向こう側で苦しんでたから、こうやって僕がわざわざ助けに来てあげた訳。ちなみにそれは昨日の話」
私の思考を見透かすように、質問する前に答えが述べられた。どうやら蒼い目は頭の中まで見えるらしい。
そうか、じゃああの時私を襲った浮遊感の正体は五条さんで、その後この部屋まで運んでくれたということか。
僅かに軋む身体を起こし、ベッドに腰をかけて五条さんの方を向いた。
「すみませんでした。ご迷惑とお手数をかけさせてしまって…」
「僕、謝られるより感謝されたいんだけど」
「………ありがとうございます」
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 555人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜！すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (
レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました！すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください！応援してますー！ (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます！！時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…？と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです！すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします！ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます！ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…！！ (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユコ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時：2021年3月18日 11時
