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五条悟side
『た、すけて…』
ガシャンと耳を
アイツが僕に助けを求める訳がない。そもそもそんな蚊の鳴くような声なんてらしくない。いつでも強がっているような女じゃん。
…だとしたら、これは何だ。趣味の悪いイタズラ?地獄だね。
自分からかけた電話の目的も忘れて切ろうとした。…けど。
「ハァ………うッ……………ハ…ァ………ヒュッ…」
短く荒々しい呼吸音と、喉が締まるような呻き声。トサ、と何かが倒れるような音が聞こえる。そしてまた苦しそうな声。
―――心臓を針で貫かれたような感覚に陥った。
「…何、ドッキリ?」
相手は何も話さない。「そんなサプライズ要らないんだけど」と続けるつもりだった言葉もいつのまにか頭から逃げ出した。
自分の直感が、彼女に会えと叫んでいる。
所在を聞こうとして、自分が電話をかけた理由を思い出した。確か僕は、実家に寄るから帰りが遅くなると送ってきたAに夕飯のことを聞こうとスマホを手にして…
「とりあえずそっち行くから」
どうせ大したことないだろうけど。
その言葉はまるで僕自身に言っているかのようで、大したことじゃないように願っているようで。
電話は切らずに彼女の実家―藤沢家までトんだ。
婚約者について下調べするのは当たり前。だから実家の場所は知っていたけれど、来るのは初めてだ。
何処にでもある二階建ての民家。その玄関に何かが落ちている。
「………A…?」
紛れもないAの呪力がそこに渦巻いていて、咄嗟に目隠しを下げて側に駆け寄った。
落ちていると思われたそれは、探していた婚約者だった。
荒い呼吸を繰り返し、苦しそうに喘いでいる。
「ねぇ、」
返答は無い。聞こえていないのか、僕に気付く余裕が無いのか。
小さなその体を抱き起こし、額に張り付いた前髪をそっと退かす。
過呼吸だ。怪我はないから心因的なものだろうか。命に別状はなさそうだけど、でも何と言うか。
このままAが何処かへ行ってしまいそうな気がした。
「ッ…分かるか」
もう口調を取り繕っている余裕なんてなかった。
少なからず僕も焦っていて、不自然に曲げられた氷のような手を包み込むのが精一杯で、
「もう大丈夫、だから」
居なくなるな、とは言えなくて。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時