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悪い夢を見ているだけ。そうであってくれ。
ちゃんとこの耳で聞いた。間違えることの無い声だ。
矛盾した意見が幾つも飛び交っては、脳内の時間を貪っていく。
自分の隣を、見上げられない。
「駅の屋根にいるアレのことだよ。2級かな?今の君なら祓うことなんて容易いだろう。もう中学生じゃないんだ」
紛れもないその声は、出会ったあの日と同じであることをどんどん証明していく。
嘘だ。だって、この声の主は、もう。
「可笑しいな。私は呪霊じゃないから非術師にすら見えているはずなんだけど」
私の足を止めていた信号が青に変わった。でも進めない。鼻の奥がツンとなり、変な汗が背中を伝う。鼓動は変に速度を上げていく。
見てはいけない、でも、見なければ。そこに私の探していた“確信”があるのだから。
「…う、そ」
「やっと見てくれた。久しいね、A」
その男は切れ長の目をより細めて、私を見下ろしていた。服は胡散臭く見慣れない袈裟だというのに、顔は恐ろしい程に
警鐘が頭を割りそうなほどに鳴り響く。現実を処理出来ていない頭が辛うじて「逃げろ」と私に告げている。
しかしそれに反して、私の足は石化したかのように動かない。
「幽霊でも見るような目だね」
「…死んだ、って」
「悟から聞いたのかな?確かに殺されたよ。一度はね」
一層深くなった笑みに思わず数歩後退りした。そして無理やり動かしたぎこちないその行動に、目の前の男は困ったように笑う。
やめて。そんな懐かしい表情を見せないで。私を惑わせようとしないで。簡単に揺らいでしまいそうになるのだから。
そうやって私が未練と葛藤しているのを露ほども知らない素振りで、相も変わらず黒髪長髪の男は1人で話を始める。
「A、君は非術師共を恨んではいないかい?」
「…は」
「言葉通りの意味だよ。呪霊が見える、術が使えるという理由だけで私達のことを忌み嫌い、心無い言葉ばかり浴びせる。
私達が居ないと何も出来やしないそんな猿共のことを憎たらしい、恨めしいと思ったことなんて、一度や二度で済まないだろう?」
まるで私が非術師を嫌っているかのようなその言いぶりが、少し落ち着いた頭の隙間に嫌な記憶を思い浮かばせる。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時