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私が時折涙を落としながらゆっくりと食べ進める間、五条さんは何も言わずに正面に座って同じように食事をし、私が食べ終わるのを待ってくれていた。
その後シャワーを浴びた私が髪を乾かしている間も気にかけてくれていたのか、時折背後や横から視線を感じた。
何だかこそばゆくて、同時に勘違いしてしまいそうになる。
恋愛対象にならない関係性だからよかったものの、女性にこんな事をしたら間違いなく好意を持たれるだろうに。
「もう寝るの?」
「はい。流石にこれ以上任務は休めないので」
「…そ」
極めつけはこれだ。寝る支度を終えた私を待っていたかのように、一緒に寝室へ向かう。
いつもはさっさと先にベッドで休んでいるのに、こんな時ばかり優しさを見せないで欲しい。狡いから。
ぶっ倒れた人間だからこうしてくれているのかもしれないが。
「君さぁ、死ぬ気じゃないよね」
キングサイズのベッドの端にいつもの様に潜り込むと、いつもより少し遠慮がちなトーンでそう投げかけられた。
残念ながらそんな気は更々ない。今のところは。
「生きる意味があるうちは自ら死ぬ事はないと思います」
「好きだね、意味。まあ君の場合それだけじゃないけど」
「というと」
「任務で簡単に死にかねない。死んでもいいとか思ってそう」
なるほど。確かにそれは自分でも思う。
「信用無いんですね」
「だって今日何があったかも言わないじゃん」
それは仕方ない。墓場まで持っていくと決めたのだから。1人で抱えると決めてしまったのだから。
少し置いて、低い声が耳に届く。
「君の事嫌いだけど、“死んでほしい”とは思ってないんだよね、流石に。
硝子や七海、あと君に懐いてる生徒達が悲しむし、僕だってこっち側の人間が死ぬのはヤだし」
今の私は、恐らく間抜けな顔になっていることだろう。
まさか五条さんからそんな言葉を聞くとは思ってもいなかった。
どこか遠くを捉える蒼い目は、高専時代のあの暑い日の記憶でも手繰り寄せているのだろうか。
少し寂しそうな。五条さんには珍しい雰囲気を纏って。
「今は婚約者なんだし、僕を置いてって未亡人にしないでよ」
「…結婚してないならギリなりませんよ」
「じゃあ絶対ならないようにしてよ」
いつもの軽いやり取り、で終われたら幾分と楽だっただろう。
彼も、置いていかれることに何も思わない訳じゃない。
置いていかれる側の私達は、未だにその感情に慣れたフリをしているだけだ。
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時