【呪術廻戦】目の前の最強さん

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家入硝子side


「…何なの、あの2人」
「それは私の台詞。何なんださっきのお前」



むすっと膨れているが恐らく自覚は無いのだろう。その様子が余りに子どもっぽくて、やっぱりこのクズはただの28歳児だと再認識した。
自分の本当の気持ちを認めたくない年頃とか、いつまで思春期拗らせているんだ。



「あんだけ嫌っておきながら、一丁前に七海に牽制か？」
「別に？牽制も何も、Aは僕のじゃないし」



まだ(･･)僕のじゃない、の間違いじゃないのか？
そう言おうとして辞める。どうせコイツは認めないだろうから。
でも去り際のあの2人に対して、目隠しをしていてもその下で鋭い視線を向けていたのは容易に想像がついた。
それを牽制と呼ばないのなら、何だと言うのか。



「嫉妬とか牽制とか、そんなのは微塵も無いよ。
ただ、あの2人あんなに仲良かったんだって驚いただけ」
「あいつらは高専時代からあんなだろ」
「そうだっけ？」



知らない訳が無いだろうに、とため息を吐く。
七海とAと灰原、私達3人とはまた違った関係性で成り立っている後輩だった。後に灰原は死に、夏油は離反。どちらも2人になって、後輩は揃って高専を去った。
五条や私も介入できないその関係性は、友情とも恋愛ともまた違うように思えた。

2人が去った方をまだぼんやりと見つめている同期に、私はまた口を開く。



「そろそろ自分の気持ちに正直になったらどうなんだよ」
「どういうこと？」
「…そういう所。いつまで逃げるつもりだお前は」



白々しい態度を取り続けるそいつに、呆れてものも言えない。
そっちがその気なら、こっちは退路を塞ぐだけだ。



「お前はさ、愛情に似た何かを相手に注ぐのは簡単にやってのけるけど、本物の愛情は注げないんだろ。分からないから」



沈黙は肯定と捉えておく。そうじゃないにしても心当たりくらいはあるようだし。
特定の相手と長く関係を持たないのは、人に恋愛感情を持てないからだ。自分の欲を発散出来る相手さえ居ればいい、なんて割り切って最低なことを考えているのかもしれない。



「どうすべきなのか分からなくて、大方その感情を持て余してる、ってところか」
「…それ、女の勘ってやつ？」
「学生時代からの同期の仮説」



何年一緒にいると思ってるんだ。そう呟けば、190オーバーのそいつはくるりと踵を返した。
珍しく複雑なその表情は、仮説が正しいことを示している。


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