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その場で暫く呆然としている間に、欠けた月が空に昇っていた。
何時なのか確認する気力もなく、冷たくなってしまった亡骸を車に乗せ、回らない頭で運転して帰る。
そうして約1時間後。家入さんの元を訪れた。
「………そうか」
私の掻い摘んだ説明を聞くと、彼女はそう呟いて処置を始めた。
高専関係者であれば、術師ではない補助監督でも常に命の保証は無い。前線に立つ私達に比べればまだいいのかもしれないが、自衛する術も持ち合わせない人も多くいる。
彼もその1人だった。私との関わりはたったの数回。どれも任務に同行してもらうばかりで、ちょっとした顔見知り程度だった。
それでも、先刻まで自分と会話をして「ご武運を」と送り出してくれた人間が、帰ってきたら無惨な殺され方をしているだなんて、誰が想像していただろうか。
もともと、ここはそういう世界ではあったのだけれど。いつも綱渡りのような死線をくぐっているのだけれど。
「この事について報告はしたのか?」
「…いえ、まだ」
「そうか。学長には私から伝えておくから…今日は休め」
労わるような声と共に差し出されたのは、濡らしたタオル。どうやら顔に血が飛んでいたらしい。彼を抱えた時に、顔だけでなく服も血だらけになってしまっているのだが、それはもう仕方が無い。家で洗う他ない。
心在らずのままグイグイと顔を拭っていると、ポケットのスマホがバイブレーションを鳴らし始める。とても受ける気にはならず、無視を決め込む。もう今日は何も考えたくない。
そう考えていたのが顔に出ていたのだろうか。家入さんはため息を一つついた。
「五条なら出てやれ。アイツ以外なら切っていいから」
「なんで五条さんが…?連絡入れてないからか」
「そんなこと言ってたな。ずっとお前に掛けてたらしいぞ」
取り敢えず誰からかの確認くらいはしろ、ということらしい。おずおずと上着のポケットに手を差し込んで、まだ震えているそれを取り出す。
…ああ、受けないとだ。
「…もしもし」
『お前さぁ、この僕からの電話何で出ないわけ?』
第一声からものすごく不機嫌なオーラが伝わってきた。どうやら、何度も掛けてきていたという家入さんの話は本当らしい。
『晩ご飯の連絡しようって言い出したのお前なのにしてこないし』
「すみません」
『何、今日は外泊?それも連絡しろって言ったのはお前じゃん』
「…すみません」
『ハァ…すみません以外に何か言えないわけ?』
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ユシュケ(ユコ)(プロフ) - まめさん» ありがとうございます〜!すごくすごく久しぶりにまた更新しましたのでまた読んでやってください✩ (2022年12月20日 1時) (レス) @page48 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
まめ(プロフ) - ずっとずっと待ってました!すごくすごく久しぶりに開いたら通知が来ていたので嬉しすぎました泣また頑張ってください!応援してますー! (2022年9月25日 21時) (レス) @page47 id: 3de5d823fb (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - 妃さん» こちらこそありがとうございます!!時間が経ってしまいましたがまた読んでいただけると嬉しいです♡ (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - chiaki0708さん» オリジナル要素多すぎて読みにくいかな…?と思っていたのでそれを聞けて嬉しいです!すこ~しずつまた更新していくのでよろしくお願いします! (2022年9月4日 1時) (レス) id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
ユシュケ(ユコ)(プロフ) - はるきちさん» ありがとうございます!ちょこちょこ再稼働し始めたのでまたよろしくお願いします…!! (2022年9月4日 1時) (レス) @page47 id: cf63eb9bb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユコ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/oorsayui/
作成日時:2021年3月18日 11時