歯車 ページ48
誰……？
真っ先に脳に浮かんだのはそれだった。
でも相手はわたしの名前を知っているのだから初対面ではないんだろう。
どちら様ですか、とは口に出せないでいると、ふと。
(あれ……デジャヴか？)
何処かで見たような光景だな。って思った。
.
.
あぁ、違う。デジャヴなんかじゃない。
.
……いつぞやかのシンジロウ君だ。
｢……おはよう｣
｢お、おはよう！｣
挨拶を交わし、また走りだそうとしたら｢ぁっ、待って！｣と止められた。
｢何……｣
あんな言い方したのに。まだ何か用があるのだろうか。それか、文句かな。
.
待って、とは言われたけど、歩みは止めない。
何故なら時間内に帰らないと咬み殺されるから。
シンジロウ君を振り向きもしないまま、歩きながらわたしは彼の話を聞く。
.
｢あっ、あのさっ『そういうのほんとヤだ』ってAさん言ったじゃん……？｣
自分の発言の再現いやん。
｢そ、それで考えたんだけど、や、やっぱり……｣
吃るなぁ……。すげー吃る。
｢突然の名前呼びは嫌だったよね……！ お、オレ、今日から苗字で呼ぶから！ ほんとごめん！｣
……なんだそのお門違いな謝罪は。
第一、わたしは。
｢苗字は嫌…………｣
シンジロウ君を振り返った……つまり背後を見た時。
.
｢っ!!!｣
｢う…………そ…………｣
掠れた声が出た。
心臓がどくん、どくんと脈打ち始める。
目を大きく見開く。
.
｢……久し振り、Aちゃん｣
シンジロウ君の後ろにいた人が、柔らかい声音でゆっくりとわたしの名を口にする。
.
.
｢――『沢田』さん……？｣
シンジロウ君の声が、何処か遠くに聞こえた。
.
｢ツナ……くん…………｣
.
.
“沢田A”
それがわたしの名前。
.
止まった筈の歯車が、ゆっくり、ゆっくりと回り始めた――――――
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 145人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「リボーン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白雪(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます( *´艸`)続きが気になると言っていただけるのは本当に嬉しいです。100番目……！本当に感謝感謝です。本日続編をあっぷさせて頂きました！二巻でも宜しくお願い致します！ヾ(*´∀｀*)ﾉ (2015年11月20日 18時) (携帯から) (
レス) id: f5f566915a (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 評価の100番目ゲット！すごく面白いです！ (2015年11月17日 20時) (レス) id: b80ecf61a6 (このIDを非表示/違反報告)
雲雀 衿弥(プロフ) - いつも読んでました！続き、楽しみにしてますね、頑張ってください！ (2015年11月14日 23時) (レス) id: bdd1f8046c (このIDを非表示/違反報告)
怜弥(プロフ) - つ、続きが気になる展開です。そして夢主ちゃんの出してくる現実的ネタ面白いですw掛け持ち大変ですけど頑張ってください！←と言いながら掛け持ちしてる人 (2015年11月14日 20時) (レス) id: b52ead1178 (このIDを非表示/違反報告)
白雪(プロフ) - ひーちゃんめろんちゃんコメントありがと―！最近は返信が遅くなってしまい申し訳ないのですが毎度うえへへ(*´∀｀*)と読ませて頂いてます！怜弥様>>籠目唄からっ！面白いと言って頂けると救われます!!感謝感謝です( *´艸`) (2015年11月14日 19時) (携帯から) (レス) id: f5f566915a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白雪 | 作成日時：2015年10月29日 19時
