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はじまり ページ1

「わっちは、籠の中のとりでありんした。」

そう言ったのは私が働くお店の姐さん
お店から卒業して外の世界へ行くという彼女は、最後に私に会いにきた

「鳥は大空に憧れます。貴方が自由になれる日が来ることを祈っています」

「姐さん、自由とはなんですか?」

「そうね…お名前にもきっとわかる時が来るでしょう」

姐さんは私の頭を撫でたあと部屋を出て行った
姐さんの豪華な着物を見送り、私は一人取り残された

このお店と仕事、そして姐さんの記憶が私の全てだ


それから数年後
私は姐さんと同じ“タユウ”と呼ばれるようになった

窓際に座り夕焼け空を眺めていた私はこの日何度目かのため息をついた
姐さんの言葉を思い出しては、自由の意味を考え物思いにふける

「お名前太夫、お客様が到着しました」

控えめに襖を開けたのは私に仕える少女
彼女に自由とは何か聞いてみようとしたが思いとどまった
私のように何年も解けない謎を彼女の胸に残すのは気がひける
何も言わずにゆらりと立ち上がり、彼女の後を追って部屋を出た

客が待つ部屋の前に着いた
中では喧しい話し声が聞こえる
身なりを整え、頭を空にして仕事のスイッチを入れた
控えめに声をかけ、そっと襖を開け部屋に入る
会話がピタリとやみ一瞬の静寂が訪れる
部屋にいたのは妙ちきりんな格好をした客だった
男の客だけでなく、女の客も何人か混じっていた

「おう!やっときたか」

頭領だろうか
一番偉そうなおじさんが声をかけてきた
それを合図に部屋はまた賑やかさを取り戻した
いつものように酒を注ぎ、笑顔を振りまき、話に相槌を打つ

頭領の話では、どうやら彼らは海の向こうから来たらしい
そして私のこのお店は、海の中に浮かぶウラヤスという島のマイハマという港町にあるらしい

「海とはなんですか」

「なんだ、海も知らんのか?海はそうだな…自由だ」

自由ーー
私の中に引っかかっていた自由の答えをこのおじさんは知っているというのか

「海に行けば…私も自由になれますか」

海も自由もよくわからないが、この言葉が自然と口からこぼれ出た

「なんだ?自由になりたいのか?」

私は無言で頷いた
するとおじさんはニカっと笑い膝を叩いた

「そうか…お前、名はなんという」

「お名前です」

「よろしい!お名前、俺の船にこい…お前に自由を見せてあげようじゃないか」

こうして私はこのおじさん…いえ、キャプテン バルボッサの船に乗ることになった

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設定タグ:ディズニー , 海賊グリ   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2018年7月23日 13時

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