並中生徒会長、だった人の日常 (ページ44)

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もういいでしょページ44

雲雀side

なにもなかったようで、顔には出さないが安心する。

色気のある話はありえないと言っていたが、アルコバレーノはともかく、彼女にはあるから。

あの時沢田綱吉たちが慌てていたのは彼女が余りにも大人に、言うなれば色気に当てられていたぐらいだ。

もちろんその場にいた全員咬み殺したけど。

あと、笑顔で仲間だと腕を回してくる山本武はいる。

本人は違くとも、周囲が…ということだ。

携帯を取り出し、彼女の送ったメールを読み上げる。

「帰る場所、一時、変更します。

もういいでしょ。」

「うん！またね、風。」

呆然とするアルコバレーノを置いて僕たちは部屋を出た。

「ただいま、恭弥。」

「おかえり。」

ただいまに対し、おかえりと返す。

それは昔、彼女の夢だったことだから。
今も彼女だけは続けている。

だが、様子がおかしい。

たまなにか巻き込まれたのか。

「…どうしたの。」

「名前…呼んでくれない……」

彼女にとって名前がどれほど大切なものか、思い出す。

「おかえり、A。」

名前を呼ぶと、とても嬉しそうに、彼女は笑った。

「そういえば…どこかのアホが沢田綱吉からもらったやつ、他の奴と使ったらしいんだけど…知らない？」

でもこれは根に持つ。
しかし当の本人はまったくわからぬようだった。
彼女は、Aはアホだけど馬鹿じゃない。

「私、使ってないよ？」

「…この前のは。」

「たまたま空席だったらしいよ。」

Aは僕に嘘をつかない。
どうせついても隠せたことが一度もないけど。

「それに、あれは恭弥と行きたいやつだよ？いくらご飯作るのめんどくさくても、恭弥と行きたいやつを使うわけないじゃん。」

「…はぁぁ……」

本当に、心臓が痛くなることを言うのをやめてほしい。
なにかは知らないけど、健康なのに痛くなるのは、いつもAの言動が関係している。

「恭弥？」

「今日、仕事は？」

「ないよ。私たちふたりでちゃんと話し合った方がいいから、だってさ。さっき見たけど。」

メールにはそんな内容が打たれていた。

「そんなの必要ないのにね。だって私たち、『同級生』だし。」

「…そうだね。」

Aの言動でたまに心臓が痛くなる。

けど、それは嫌な痛みじゃないから。

「恭弥、どっか出かけよ？」

「うん。」

黙っててあげる。