並中生徒会長、だった人の日常 (ページ39)

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修羅場ページ39

雲雀side

笹川了平からの通話を繋げながら話を聞く。

今夜いいですか、ってなに。

この服ありがとうございます、ってなに。

その男は、誰。

「待ちなよ。」

僕の声に足を止める彼女。
互いに見つめ合う瞳は、両者共に普段とは別物だろう。

僕だって、こんなにも怒っているんだから。

「…随分と楽しい食事だったんだね。」

「とても。」

皮肉を込めるも、彼女の言葉は少なく、感情が隠れている。
ええ、とも、うん、とも言わないから昔より、厄介になったと思う。

「食事の感想だけなら、沢田くんに言った方がいいと思うけど。ここ、すごく美味しかったよって。」

それは皮肉か、事実か。
判断するにも話し方は僕よりも、彼女の方がずっと上だ。
彼女に僕の感情や状態は知られても、僕は彼女の感情も状態もなにもわからない。
彼女は隠すことが誰よりも、上手いから。

「で、でも…なんで、雲雀さんが…」

「オレが極限に呼んでおいたぞ！！」

「おい芝生頭！！どういうことだ！！」

「修羅場がケンカよりもすごいのならば、雲雀が喜ぶに決まっているだろう！！」

普通の、肉弾戦などの戦闘ならば。
けれど、これは違う。

これは、ちがう。

「勝手にしろって送信したよね。」

「自分勝手にも限度があるだろ。」

周囲の温度が下がるのがわかる。
沢田綱吉たちも、自分で呼んだ笹川了平も固まっていることもわかる。

周囲のことならば。

けど、彼女については、わからない。

「あの人に迷惑はかけていないわ。互いに、」

「うるさい。」

あいつのところにずっと寝泊まりしてたんだろ。

あいつが彼女の頭を撫でていた。
その事実に、もう腸が煮えくり返るというのに、今夜の話も聞きたくない。

互いに、『支え合っている』なんて聞きたくない。

そんな結婚したやつらのようなことは聞きたくない。

君は、僕のだろ。

「もういい？人を待たせているの。」

「僕は許していない。」

「その許しはいらない。」

「「「！」」」

それは彼女を除く、全員が驚いただろう。
彼女が、僕を拒絶したのも同然なんだから。

「それじゃあ、よい夜を…」

そう言って彼女は砂となり、消えた。

僕は幻術の彼女と話していたのか、それとも、幻術で姿を消したのか。

それすら、わからない。

それが、とてつもなく…悔しかったことだけは、一生忘れない。