並中生徒会長、だった人の日常 (ページ38)

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科学者としてページ38

私としたことが、昼食も忘れてヴェルデさんと実験に夢中になってしまっていた。
夜ご飯の準備もしていなかったため、外食。

そして夜ご飯はヴェルデさんの舌が肥えすぎていることから、ここに決まった。

新しく考えを話すと、ヴェルデさんに笑われる。

と言っても、ヴェルデさんの指定した姿なんだけど。
緑の髪は目立つから黒へ。
メガネも無くし…としていたら別人になっていたが、すべてヴェルデさんの指示の元だから、私に責任はない…と、思いたい。

「所詮、机上の空論だな。」

「はい。ですので…その、今夜、いいですか…？」

自分から頼み込むのは初めてだ。
いつもはヴェルデさんのものに自分が疑問を持ってやっているだけで、自分から始めたことはない。
静かになったヴェルデさんに心配になる。

服のお礼を忘れてしまっていたこと、とか？

「あと、この服、ありがとうございます。」

ヴェルデさんのオススメのお店がなければ、ドレスコードも難しかっただろう。
ここは私も行ったこともなければ、顔見知りもいない。
つまり、ルールを徹底的に守る店…融通がまったく効かない店とも言える。

ヴェルデさんがいきなり私の頭を撫でる。
それは幻覚に反映されているが、誰かに撫でられる時はいつも悪いこと、もしくは謝罪の時だけで…

「…私、なにか…しちゃいました、か…？」

「いや……お前から実験したいと言い出したのが初めてだろう。科学者として、成長を感じた、とでも言っておこう。」

私の成長を喜んだ、ということ。

本人も自分の行動には驚いていたようだった。
あまり人を褒めるのが慣れてないのか、恥ずかしそうに頬をかく。
それも反映されているのだが。

食事も終わり、幻覚は残し、ヴェルデさんの姿は消す。
近くで沢田くんたちがこちらを観察しているのは最初からわかっていたから、ヴェルデさんには先に帰ってもらった。
会計をし、外へ出ると…やはりいた。

「失礼します、知り合いなんです。」

ヴェルデさんの幻覚を先に帰し…消す。
幻覚とひとり話すのも虚しいものだ。

「こんばんは。」

「あっ、え…こんばん、は…」

そこまで気まずかっただろうか。
彼らのことだから、罪悪感もあるのかもしれない。
お人好しならではのデメリットだ。

「それでは。」

その場を発とうとした時、

「待ちなよ。」

私を引き止めるのは、いつだってこの声だ。