並中生徒会長、だった人の日常 (ページ27)

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変な子ページ27

アラウディside

この子は彼女によく似ている。
動物と話したり、リングに名前をつけてた彼女と。

僕の話から解放された彼女は、僕の意図に気づいたようだった。
…これも彼女によく似ている。
彼女は僕の言動に傷つかず、意図を読み取ることが上手だったから。

動物と遊んでいる彼女は幸せそうだった。

しかし、そこにボンゴレリングがここへ来た時、彼女は涙を流した。
…彼女も、僕の知らない理由で、泣くことがあった。
ぽつりぽつりと話すそれは、信じられないものだった。

「君たちもいつも頑張ってるのに…ごめんね。道具みたいに扱って…」

それは道具だろう。

ボンゴレリングは道具だ。

動物はそうではないだろうが、ボンゴレリングはどう見ても道具でしかない。

けれど、もし彼女が同じ理由で泣いてると思うと、気づけなかった自分に悔しく思う。
あの子に目的を聞く。

境遇はいいものではなかったのだろう。
けれど、聞いたのは目的。
この子は僕の目を見てまっすぐに言い切った。

「愛して、あげたい。」

「ならそうすれば。」とコーヒーを淹れ直す。
これ以上、そのまっすぐな目を見ていられなかったから。

おそらく愛のない…『道具のように使われる場所』で育ったのだろう。フィニからも『縛られ続けている子』と聞いていた。

その子は全員に『大好き』だと。

『大切』だと。

『信用してる』と。

『いつもありがとう』と話した。

リングはなにも言わずに浮いたまま。
そもそも浮くこと自体が有り得ないのだが、話す方がもっと有り得ないだろう。

その子はリングと動物たちに「またね。」と声をかけた。
そして、僕の方へやって来る。

「アラウディさん、これはただの私の思いなんですが。…大切な人がそこに居てくれるだけで、幸せは生まれるんですよ。」

「……」

「大切な人とたわいない話をすることも、一緒に歩くことも…傍にいてくれることも。全部が特別で、嬉しくなるんです。」

「……」

それはきっと、この子の大切な人への思いだ。

この子は恋を知らない。
そのような環境に身を閉じ込められたから。

だから、この子は代わりに愛を知っている。
自分の大切な人への思いがそのものなのだろう。

深くため息をつくと、心配そうに僕を見るこの子。
周囲は怖がるが、僕を心配するのは彼女だけだった。

「…傍に行ってくる。」

そう言うと、その子はとても嬉しそうに「はい！」と答えた。
まったく、変な子だ。

昔のフィニのような子。