並中生徒会長、だった人の日常 (ページ20)

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『誰と誰』の話？ページ20

雲雀side

Aの口から出たのは、初代雲の守護者の名前。
それに絶句するのは沢田綱吉たち。

それを詳しく聞き出すのが、僕。

「…どこを好きになったの。」

「誠実なところとか、守ってくれるところとか色々。」

『守ってくれるところ』

その言葉で自分の頭に血が上っていたことに気がつく。

「雲雀！これすっごく『カナシイ』恋物語らしいし…気にすんな！」

「バカっ！逆効果だろ！」

そうだった。

Aはいつも、言葉を勘違いされる。

しかも悪化させる形で。

「ひ、雲雀さんお、落ち着いてください！」

「うるさいよ。…で、他には。」

「初恋。恭弥知らなかったの？」

「A！お前はもう黙ってろ！」

周囲がうるさい。

「……A。」

「雲雀さん！ちょっと待っ」

「それ、『誰と誰』の話？」

「フィニとアラウディの話。」

「「「え。」」」

他3人が固まり、黙る。

たしかに質問には答えていた。

相手を聞かれていたから、その相手を話していた。

好きなところも聞かれたから、話していた。

それに初恋ということも。

僕が知らなかったということにも。

「知ってる？愛しいって、『カナシイ』とも読むんだよ。だから、これは、フィニとアラウディの『愛しい』恋の物語。」

「「「……」」」

何も言えないのが3人。
やっぱり…と頭をかくのが僕。

「短くするとね、元奴隷だったフィニとアラウディがずっと一緒にいたんだけど、フィニが奴隷として捕まったの。そこにアラウディが助けに来てくれて、そのまま結婚したらしいよ。」

「待って！？すっごく重い気がするんだけど！」

「そういえば、言い忘れてたことあったなー」

「なんか気になるな。」

「おいバカ！やめとけって！」

「アラウディはお互いに愛してるってわかってたけど、すぐに結婚までいかなかったのはさ…プロポーズの言葉にすっごく悩んでたかららしいよ。」

「はっ…ず、かしい…な？」

「だからやめろつったんだろ…」と獄寺隼人と山本武がしゃがみこむ。Aの家だからやめてくれない？

「女子のとこ行ってくるね！」

「置いてくのか！？」

「合鍵は恭弥が持ってるから大丈夫！じゃあね！」

そう言ってこの事態を引き起こした張本人はいなくなった。

…いつからここまでAに乱されるようになったのか。
考えても思い浮かぶはずもなく。

「も、もしかして…」

「咬み殺す。」

丁度いい獲物に、僕はトンファーを構えた。