並中生徒会長、だった人の日常 (ページ18)

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『カナシイ』恋の物語 3 ページ18

「駆けつけた彼は、汗をたくさんかいて、息も切れていて…いつもの彼とはまったく違う様子でした。
彼は彼女の涙を優しく拭うと、彼女を抱え、そのまま最初にいたグループのところへなにも言わずに連れていきました。

そして、彼は言いました。

『彼女を僕の妻にする』と。」

「え！？」
「ええ！？」
「……え…」

「彼女の意思も聞かずに、その後職場にもなんてことないように言いました。
その様子に彼女は夢を見ているのかと混乱してしまうほどです。」

「で、ですよね！？」
「付き合ってもないんだよね！？」
「……びっくり、した…」

「ひと段落つくと、彼は彼女を優しくソファーへ座らせました。
眠っていいと言われても、彼女は驚きすぎてそれどころではありません。
自分なんかと結ばれていいのか、もっと大切な人はいないのか…他にもたくさんのことを言いました。
しかし彼は深くため息をつき言いました。

『僕は君のことを愛してる。君が傍に居ないと落ち着かないほどに。
気の利いたプロポーズもなにも思いつかなかったけど、これでもう君が奴隷と言われる筋合いはない。
君は僕の妻なんだから。』と。」

「じゅ、十分熱烈、かと…」
「す、ごい…ね……」
「……う、ん…」

「彼は言いました。
自分はとても後悔していると。

もっと早く君を妻にしていれば、奴隷だなんて言われなかったのに。

もっと早く君を妻にしていれば、君が酷い言葉を言われなかったのに。

もっと早く君に妻にしていれば…もっと君と一緒に居られたのに。

彼の後悔は、全て彼女のためのものでした。」

「う、わぁ…」
「うわ、ぁ……」
「…う、わ…ぁ……」

「彼女はそれがどうしても嬉しくて、夢かと口にすると、その口を彼の口に塞がれました。
これでも夢だと思うのならば、どこまで持つか、試してみようか？とも…」

「ひゃー！」
「ひゃー」
「ひゃ…」

「そして彼の傍にはいつも彼女が居るようになりました。
自由人でひとりを好む彼と、そんな彼を愛している彼女…

そしてふたりはいつまでも幸せに暮らしたそうです。

おしまい。」

・

「ど、どこがカナシイんですか！！すっごくハッピーエンドですよ！？」

「うん。ところで知ってる？愛しいっていう言葉は、『イトシイ』だけじゃなくて、『カナシイ』とも読むって。」

「もしかして……」

「ね？『愛しい』恋の物語、でしょ？」

「……キュンて、した…」

そうして女子は安心したように笑いあったのだった。