並中生徒会長、だった人の日常 (ページ15)

今日:22 hit、昨日:30 hit、合計:6,902 hit

あったかいページ15

髪を切るのは『失恋の合図』とも言えるらしい。

「だからAちゃん狙われたんですよ！Aちゃん可愛いですし！」

ここのところ、命を狙われた覚えは無い。
頭を傾げるも、「「可愛いー！」」と叫ばれるだけ。なんだろう？

「そうだ！今度私の家で女子会しようよ！」

「『ジョシカイ』？」

「女の子のお話です！いつやります？みんなのお休みの前の日にしましょう！」

「う、うん…？」

女子、勢い、すごい。

そしてそれを聞きつけた部下が「部屋着用意しましょう！」「モコモコ可愛いよね！」「社長ならこんなのとかどうです！？」と部下が押しかけてきた。

本当に、女子、勢い、すごい。

そして前日……

「恭弥、明日『ジョシカイ』するらしいんだけどさ。」

「ん。」

「一緒に来て。」

「……女子会ってなんだか知ってる？」

『あの』恭弥に聞かれた。
バトルマニアでなにひとつ考えてなさそうな恭弥に聞かれた。

「女子、勢い、すごい。」

「カタコトだね。それで？」

「部屋着まで、用意、された。」

「……へぇ……誰が？」

「部下の子。」

「性別。」

「女の子。」

そう答えると恭弥は何事もなかったかのように「ふぅん。」と気配が元に戻った。
今咬み殺すオーラ出てたけど、大丈夫なんだね。

「で、部屋着は？」

「ちょっと待っててね。」

着せ替え人形のようにあれやこれやと、部下にショッピングで連れ回された。おかげで早着替えはもはや私の特技となりつつある。悲しい。

「こんなの。」

「……いいんじゃない。」

「？」

桃色の、もこもこした、うさぎのフードがついている、ショートパンツスタイルの、パーカー。
いいんじゃない、と恭弥が言うのは稀なので、どこら辺がいいのか考える。
もこもこが暖かそうだからかな。桃色ってたしか暖色だったから、それかなぁ…

結果、不明。

でも恭弥の機嫌がよくなったのは確か。よくわからないけど。

「いいでしょ、もこもこだよ？」

「うん、もこもこ。」

「それに、あったかなの。」

「うん、あったかそう。」

くふくふと笑うと、恭弥も小さく笑う。

「ぎゅー」

「！」

「…あったかい？」

あったかさを分けるために抱きつくと、少し間を置いて「あったかい。」と抱きしめ返された。

あったかいっていいよね。

後日、女子会で部屋着について話すと、悲鳴があがった。

なんでだろ？

ちなみに恭弥は女子会には来てくれなかった。

ー恋を知らず、愛を知る娘ー