ボクの日常 24 【山本武の日常 2】 ページ25
「なあ、生徒会長。」
「なんだい？」
「今度からオレも生徒会長のこと名前で呼んでいいか？生徒会長って長いし、そもそもオレ、生徒会長の名前なにも知らなかったからよ。呼べなかったんだ。」
「……うーん…」
「やっぱり、ダメか？」
「いや、別にそれはいいのだけれども。」
「確かに、校内でボクの名前を呼ぶ人はほとんどいないな。街ではよく呼ばれるが、学校ではほとんど呼ばれないな、と。」
生徒会長は悩んでいたようだった。
しかしそれは許可を出すというものではなく、自分の認知についてだった。
「やはり暴力が怖いのか？しかし室内、自分のテリトリーに入られるとどうも不満でな…」
「いや、暴力っつーより…完璧すぎるつーか…威厳？なんか話しかけるのが、難しそうなヤツに見えるんだよな。」
オレが正直に話してしまうと、「…そうなのか。」と目をパチクリしていた。
「ふむ…威厳なくては生徒会長にはなれず、皆を守れない。しかし威厳があると名前を聞くことすら難しくなる……なんとも難しいものだな…。山本、貴重な意見をありがとう。」
そういえば、と思い返す。
オレたちはいつも『生徒会長』と呼んでいるのにも関わらず、いつもオレたちの苗字を呼んでくれている。
たったひとりの、生徒のたったひとつの声。
それを貴重な意見とし、その生徒の名前を呼ぶ。
「それじゃあ、オレも呼ばせてもらうぜ。A。」
オレが名前を呼ぶと、Aは珍しく驚くと、優しく微笑んだ。
正直……一瞬、ドキッとした。
今まであんな表情を見たことがなかったから。
「…ボクの名前を呼ぶものは、少ない。みんな『生徒会長』で済ますからな。それが別に不満、というわけではないが……やはり、自分を認めてもらえるのは、嬉しいな。」
先程よりも優しく微笑む姿が、とても印象的だった。
名前を呼ばれぬ、生徒会長。
ならばオレが代わりに呼ぶよ。
「んじゃ、オレももう帰るな。」
「そうかい、気をつけて帰るんだよ。」
その声はさっきよりも柔らかく感じた。
「またな、A。」
「ああ。またね、山本。」
帰るにしても、家までまだまだ距離がある。
ランニングと言い、走って帰ればこの顔色は誤魔化せるか？
オレは家まで走って帰った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 34人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ドク(プロフ) - minniepeasukeさん» minniepeaskeさん、読んでくださりありがとうございます！そして褒め言葉ありがとうございます！（少々照れますが）。生徒会長シリーズは終わりましたが、好奇心で続きも書いたので、よろしければ読んでください。ありがとうございました！ (9月26日 21時) (
レス) id: f0778d3186 (このIDを非表示/違反報告)
minniepeasuke(プロフ) - すごく面白いです！！ これからもがんばってください YOU GOT THIS (9月21日 5時) (レス) @page5 id: 40586b4cac (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ドク | 作成日時：2023年8月24日 18時
