姉じゃない9 ページ10
「私ね、『アヤノ』！『鉄彦』くんの代わりに来たの！『鉄彦』くん今遠くに行ってるから代わりに来たの！」
午後3時、ひとり立ってる男に、こどものフリをして話しかける。
男は少し動揺しているようだった。
きっとお望みの100万円がないからだろうけど。
男が口を開く。
「アヤノちゃん。鉄彦くんから何か持ってくるように言われてない？」
「鉄彦くん慌てて、3時にここに行ってってしか言ってなかったよ？でもAちゃんとAちゃんのスマホ、返してくれる優しい人なんだよね？」
満面の笑みを浮かべるも、男は眉間にシワを寄せるだけだった。
そして、確かに言った。
「コイツも人質にするか。」と。
「Aちゃんに会わせてあげるからおいで？」
「ここじゃないの？ここでAちゃんもスマホもぜーんぶ返してくれるって言ってたのに。」
『苛立ち』と『焦り』でいっぱいなのが見え見えなんだよ、馬鹿。
「返して！！Aちゃん返してよー！！」と叫ぶと周囲はこちら振り向き、男は急いで私よ口をふさぐ。
「調子乗ってんじゃねぇぞ、ガキ！ぶっ飛ばされてぇのか！」
「ヤダ！怖いよぉぉ！！殴らないでぇぇ！！ママー！！パパー！！」
『こどものフリ』をしている私は周囲をとことん味方につける。
こどもは何を言うかわからない。
そして、何を考え、何をするのかさえ、馬鹿なお前にはわからねぇだろうな。
段々と周囲の人達がこっちに集まってくる。
男の動画を撮ったり、野次馬だったりと理由はたくさんだがこれで男に逃げ場は無くなった。
男が違うと言っても、それを信じる者なんて居るはずもない。
「俺はただ！！」
「言い訳はあっちで聞こうか。」
待機してもらったお巡りさんに男が捕まる。
それを大勢の人たちが写真を撮る。
よかったな、一生モンの写真だぜ？
お前の望んだ未来への第1歩だ。
なぁ、脅迫罪の犯罪者サン？
ソイツの耳元で囁く。
「ざまぁみろ、クズ野郎。」
「て、めぇ！！！」
怯えたフリをすれば男が余計に責められる。
「アヤノ怖かった…。でもね、お巡りさんのおかげで怖くなかったよ？ありがと！お巡りさん！」
笑うと人のいいお巡りさんは騙される。
そこには深い『安堵』の宿った目。
こんないい人を騙したのは罪悪感がある、けれど。
私の家族を、鉄にぃを泣かせたんだ。
当たり前だろ？
「助けてくれてありがとうございます！」
周囲も絆される。
ほらね。
『こども』は笑うのが1番だ。
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作者名：ドク | 作成日時：2022年8月24日 18時
