俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ10)

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天才じゃない11 ページ10

「おはよー。」

「…。」

「鉄にぃおはよー。」

「……。」

「おー！！はー！！よー！！うー！！」

「………。」

「マ」

「あー、よく寝た。」

「ママ」と呼んでいないのにこの速さ。
この狸寝入りどうにかしたい。

鉄にぃから感じるのは『楽しい』『嬉しい』という明るい感情ばかり感じる。
これがバレーになったら多少『苦しい』が入るけど、それを上回る『楽しい』がある。

「鉄にぃ起こすのにバレーボールでも使ったら起きる？馬に人参ぶら下げるみたいに。」

「扱いひでぇな？」

あんだけバレーが好きなら、バレーボールをぶら下げれば反射的に起きると思うんだけど…。
私が「明日からそうしようか？」と聞くと、悩んだ末に「多分起きねぇな。」と言う。

「なんで？バレー好きじゃん。」

「いや俺のことなんだと思ってんの。」

「鉄にぃ。」

「それって人間に分類されてていいんだよな？？」

話が脱線しそうだったから「早く！」と聞くと、とんでもなくふざけた答えが返ってきた。

「んー、毎日必死に起こそうとするAを見るのが好きだから？朝来たなーって思うし。」

「……学校行く。」

「なんで！？」

どう考えても鉄にぃのせいだろう。

ふざけないでよ。

そう言いたかった。

けれど、初めて言われた『その言葉』に身体を固くする。

『好き。』

あんなの、言われて……嬉しくないはずがないじゃないか。

「…バカのくせに。……バカ。」

生まれて初めての、『私に対しての好き』。

小説や漫画、ドラマとか、ここに来てからたくさん見てきた。

見てるのは恥ずかしくないし、むず痒くない。

でも、それとこれとは別じゃないか。

今まで褒めてくれなかった家に生まれたからって。

今まで物のように扱われていた家に生まれたからって。

『私に対しての好き』。

日常会話のそれでさえ、嬉しくなるなんて。

居てもいいんだ、って思ってしまうじゃないか。

消えたいのに、消えられない。

だから困るんだよ。

迷惑と、居てもいいが、

『苦しい』と『嬉しい』がごちゃ混ぜになってしまうから。