天才じゃない9 ページ8
黒尾side
「なあ、研磨。」
「…何。」
「A、本当に俺より馬鹿だったわ。」
「教えてもらっといてバカにするとか、いい度胸があるな?」
「いや違ぇって!!」
久しぶりの、いつもの部活終わりの帰り道。
何気なく話したのは昨日のすげぇプリントのこと。
俺が苦手となっていたものは全てまとめられていて、ついでにわかりやすい解説付き。
特に気になったのが、俺でさえ理解出来るものも書かれていたから、余計にすげぇ。
本当にAは努力して、努力しまくって、『天才』って呼ばれるようになったんだろう。
その時間はどれほどのものか俺には想像もつかないが。
「俺でさえ理解出来るものも細かく書いてあって、本当にAは馬鹿だったんだなって思った。」
「うっさいなぁ。こっちはなんでわからないの、ってのでいっぱいなんだけど??」
ため息をつきながら俺をジト目で見るA。
Aは初歩の初歩とか、基礎の基礎とか、そういうのを「わからない。」というと「なんでわからないの。」と言う。
一見それは『なんで理解できない。』と責めているように見えるが、実際は『なんでわからないままにしたの。』という意味だから。
「なんでわからないの。」の後に、「わからなかったら、きちんと聞きに来なさい。」と付け加えるから。
『わからない』『理解出来ない』奴の気持ちがわかるから。
その言葉の中に、相手を傷つけるものが入っていないから。
だから俺はAの「なんでわからないの。」を不快には思わない。
「今日は寝ないように頑張ってプリントを読むこと。…一応言っとくけど見張りは起きてるからね?」
「ハイ……。」
「A、頑張って。クロ、バレー以外は集中力すぐ無くなるから。」
「……Everyday(毎日)」
「だよね。お疲れ様。」
研磨と軽い会話をして帰る。
たった数十歩のふたりの家への道。
「自分の勉強に小説作り。加えて俺のテスト対策と勉強。…ちょっと、オーバーワークすぎじゃねぇの?」
またAが倒れるのではないかと心配になる。
あの時たまたま部屋を覗いた時にぶっ倒れてたAを見た時は焦った。
「鉄にぃの勉強は私の復習になる。勉強も趣味もちゃんと体調管理のうちに入れてる。…だからもう鉄にぃに迷惑かけない。大丈夫。」
まっっったくわかっていないAに俺はため息をつく。
そして今日もふたりで「ただいま。」と言うのだった。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時