天才じゃない8 ページ7
熱が下がり、身体が軽い。
健康っていいな、と思いながらも、風邪をひいている人と同じベッドに入りながら手を握った兄に説教すること30分。
母から無事に犯人が捕まったと聞き、明日から学校へ行けることになった。
「研磨と久しぶりに会う気がする。」
「自宅待機だったからな。研磨は普通にゲーム三昧で喜んでるかもしれねぇけど。」
いつも通っていた道さえ懐かしく感じるし、研磨にも久しぶりな気がする。
たった3日なはずなのに、と思ったが、私たちは3人でひとつということを思い出す。
ひとり欠けたらそりゃ落ち着かないわけだ。
「それじゃあ今日は…鉄にぃのテスト勉強に集中出来るわけだ。」
「今急に頭が痛くなってきたかも。…風邪?」
「自己管理が出来ない兄の代わりに妹がきちんと見てるから大丈夫。」
勉強になった途端に体調不良を訴える兄を軽くあしらう。
「はーい。」と言っているあたり、信用はしてもらえているんだろう。
鉄にぃの部屋へ向かうとテーブルの上に印刷したプリントを数枚置く。
「と、いうわけで。鉄にぃの苦手なとこ、全部まとめて、わかりやすく解説付きで書いてきた。」
「うわマジでわかんねぇとこばっか!…でも、わかりやすいな?」
「鉄にぃより馬鹿な私が歩んできた道なんだから、わからないところなんて私の方がわかってるに決まってるでしょ。」
自分で自覚出来るレベルで私は馬鹿だ。
物覚えや理解は誰よりも遅い自信がある。
ただ、理解したら誰よりも速い自信もあるけど。
しかし馬鹿な私がどこに、どうやってつまずいたのか、なんて思い出すのも簡単だ。
「これ見たら少しはマシに…って何?」
「……いや、純粋にすげぇなって。…やべぇ…すげぇ。」
「っ!お世辞は要らない!」
「いや本当にすごいから。すげぇ読みやすいし。」
「いいから!はい!プリント読む!!」
「すげぇのに…。」とプリントを見る。
あんまり純粋に褒めないで欲しい。
『天才』とか『出来が違う』とか、そういう『嘘の褒め言葉』じゃないと困るんだよ。
努力が認められたみたいで、嬉しくなる。
嬉しくなって、こっちの調子が狂う。
その日は鉄にぃに休憩を挟みながら勉強を教えていたが、度々入る「すげぇな。」に私は赤くなることしか出来ないのであった。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時