天才じゃない5 ページ6
黒尾side
俺が少し頭を撫でただけでパタンと俺にもたれかかるように眠るA。
熱で体力がほとんどなかったんだろう。
眠い時は頭をぐりぐりして来たり、抱きついてきたりと本人からの行動もあるが、頭を撫でた瞬間に眠るのは初めてな気がする。
もたれかかったAのその顔は赤く、荒い息遣いが聞こえる。
ゆっくりとベッドに寝かせると、眉間にシワが寄っていて、たくさんの汗から辛そうな様子がわかる。
あんまり弱いところを見せたがらないAだからきっとさっきのも強がって話してたんだろう。
に、しても、だ。
「玄関で寝るとか、どうせあいつのことだから万が一のこと考えてだろうけど…それでお前が風邪ひいたら意味ねぇだろ…。」
それに、もしその万が一があったらAはどうなるのか。
犯人が玄関から入ってきたら当然先ず1番先に狙われるのは自分だというのに。
そして俺が助かった、あの危機回避能力は昔の虐待が原因だと言う。
昔の虐待で、身についてしまったその力で、助かった俺。
虐待については今も身体に傷が残っていることを気にしているAにしたことは許せない。
しかし、その必要最低限の傷に収めることが出来るまでの過程で身につけたその力で助かったのも事実。
Aが死なないために身につけた、努力した力で生きてる俺。
「…情けねぇよな…。」
苦しむAの頭を撫でると、ほっ…と呼吸が楽になったように見える。
誰かに撫でてもらうこと。
手を握ってもらうこと。
抱きしめてもらうこと。
当たり前のことのはずなのに。
たったそれだけのことでAは安心する。
それすらしてもらえない、愛のない環境で生きてきたAに少しの寂しさと切なさを覚えた。
「…バカは風邪ひかないっていうし、セーフだろ。」
俺はAが起きるまで、Aのベッドに手を握りながら眠った。
次の日、俺は風邪をひかなかったが、Aに存分に怒られたことは考えるまでもないだろう。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時