俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ50)

今日:12 hit、昨日:12 hit、合計:39,540 hit

番外編【天才じゃない、補習の秘密 5】ページ50

黒尾side

何がどうやってこんなに自分のことをどうでもいいと思うような子が出来たのか。
それは元を辿ればAのことを『物として』扱われてきたことが原因なんだけども…

……思い出したら腹立ってきたからやめとく。

とにかく、Aは自分に興味を持たなすぎる。

『自分を大切にしなさすぎる。』

なんで俺らのため息聞いて、テスト受けられなくてごめんなんて謝る？？

「なあ、なんで俺らがこんなため息ついたかわかるか？」

「えーと…悪い子……だから。」

アイツの考えが染み込んでしまっていることに腹が立つが、今はそうじゃない。

「違う。Aがやったことはすごいことなんだ。人の命を助けたんだぜ？再テストぐらいやらせてもらっていいだろ。」

「でもそれじゃあ、公平じゃない。それに、それを理由に、言い訳にしたくない。」

「正義感とかは結構。でもよ、俺らとしてはさぁ…毎日毎日お前の悪口とか聞いて、結構腹たってたわけよ。」

「…はぁ……。」

あ、絶対わかってねぇわ、この顔。

研磨を見るも、『この子ダメだ。』という解答が目で伝わる。

「…あのね、A。俺らはAのことがすごく大切で、『大好き』だから、周りに悪口言われるのが嫌なの。」

「うん？」

「もしクロの悪口言ってる人たちがいたらどうする？」

「全力で怒る。」

「だよね。でも、本人がやめてって言ったら？」

「…頑張って、我慢、する。」

相手の思いを優先するからこそ、苦しい時もある。
それがあの時の俺らだから。

「苦しいよね。」

「……うん。」

「それが俺ら。全部言ってくれたら周りに悪口なんて言わせなかったのに、って悔しい。わかる？」

「…うん。」

「こういう隠したりするの、二度としないで。

わかった？」

「……うん。」

淡々と事実と共に追い詰めていく研磨に、流石Aの性質を熟知しているなと関心する。
しっかりと反省したであろうAが、小さく俺らの制服を引っ張る。

「前さ、『なんでテストの点数低いの？ミスしたの？』って研磨言ってたよね。」

「うん。」

「私、学校ではテスト受けれないっていうミスしたけど、現場ではミスしなかった。

みんなみたいに、生命『繋げたよ』。」

『繋げ』

それは俺らのバレーのことで。

「あーもー！こういうのあるから許しちゃうんだよなぁ…。」

「……わかる。」

俺と研磨はAの頭をよしよしと撫でた。

Aはとても、嬉しそうに、目を細めていた。