天才じゃない37 ページ36
黒尾side
「悪かった!!」
「こっちこそ言い方、キツかった。ごめん。本当に…ごめんなさい。」
元に戻ったふたりが互いに頭を下げる。
それは温度差があったりするけど、思いはどちらも同じだとわかった。
「あと、皆さん……空気、悪くして…ごめんなさい。」
ぺこりと小さなお辞儀をする子が義足だなんて誰も気づかなかったんだろう。
全員の視線がAの足へ向かっていた。
パッと見ジャージでは何もわからないから。
わからなくなるまでAが必死に練習したから。
こんなちっさいのが、自分よりずっと大きいやつに叫ぶぐらいの苦労をしているとは思っていなかったから。
理由なんて探せばいくらでもある。
でも、1番響いたのは、きっと。
「…ありがとな。」
「うん。どういたしまして。あとでちゃんと病院行こう。身体、大事にしてね。」
あんだけ言われていた奴が、相手のことをまだ心配していること。
呆然としている梟谷の前に立つ。
「はーいはいはい。つーわけで、この勝負春高までお預け、でいい?」
「おう!いいぜ!!にしてもお前やるな!!お前の妹!!チビなのに!!」
「うわっ…情報量クソ、デカさ、ん…。…セッター、じゃなくて赤葦くん、この人連れてって……半径3m以内に入れたくない……。体、調悪…化する…。」
「そんなにか!?てか本当に真っ青じゃねぇか!」
Aの顔はよいとはとてもじゃないが良くなかった。
「A、顔色……。」
「山本く、ん…と比べ、れば……なんてこと、無い。山本、くん…なんで、我慢したの、さ。」
「…もう少し、もう少しだけ、やれると思ってた。」
「だろうね。」と床にへたり込むA。
人の心配ばかりしているこいつが、何故か少し、怖いと感じた。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時