検索窓
今日:33 hit、昨日:12 hit、合計:39,561 hit

天才じゃない25 ページ24

「…ほぁ?」

「おはよ。」

「どういう、状況??」


さっきまで私たちは歩いていたはずだ。
墓場まで持ってこうとしたものを研磨に話して、そこから…その……『私自身を好き』って、言われ、て…。

そこから、何した?


「……ヤバい、記憶が全くない。研磨、私また気絶したの…?てことは外で気絶するわけにもいかないからここまで、運んで、くれ、て……。ごめん、手間かけた。」


ああ、また迷惑ばかりかけている。
私を膝に、胡座の真ん中に置く研磨は「別に。」と言った。
いや、『言ってくれた』のだろう。
研磨はすごく、優しいから。


「Aが思ってる以上にこっちは迷惑だって思ってないし、どちらかというとクロの方がすごく迷惑かかって困ってる。A軽いし。……ホントご飯食べてる?」

「食べてるし、気分的な問題で毎朝牛乳も飲んでる!この前この前2mm伸びたし!」

「……それって伸びたうちに入るの?」

「入る!」


また、いつものペースに誤魔化されてしまっている。
だからいつも『ごめんなさい』が言えないんだよ。

「ねえ。」と研磨が声をかける。


「Aって、俺らのこと好き?」

「…大事だし、大切だよ。じゃなきゃ強盗の時だって命張らないし…守りたいから。」

「うん。あれはまだ怒ってるけど、気持ちはわかった。でもAから『好き』って聞いたことないなって。ちなみに俺らはAのこと、好きだよ。」

「…馬鹿だから、そーゆーの…ほんとに困る。……生きる価値、ないのに。」

「ある。俺ら3人でひとつだから、ひとり欠けたらすごい困るし、俺はAと一緒に居たい。もちろんクロもね。」


なんで。
なんで研磨は、私が欲しい言葉ばかり言ってくれるのだろうか。
生きてる価値が、存在意義が、生きたいっていう欲が、できてしまうじゃないか。

「Aは?」と問いかけられる。
それはさっきの答えじゃ足りないということを表していて。


「……言っても、いいのか、わかんない、から…言えない。」

「俺が聞きたいから言って?」


本当に研磨はズルい。
臆病者な私は研磨の制服の端を掴む。
少しでも勇気が出るように。


「…だ、大好きだよ!!バカ!!!」

「うん。…すごく、嬉しい。」


研磨が笑ってくれたから。
少しだけ、『好き』が言えるようになれた、気がした。



「…ここから降りる?」

「…別に。嫌い、じゃないし。」

「そ。…じゃあクロが迎えに来るまでここにいよっか。」

「うん。」

天才じゃない26→←天才じゃない24



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (34 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
134人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。