俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ23)

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天才じゃない24 ページ23

研磨side

Aがこんな重荷を背負って生きていたなんて、知らなかった。
でも、それらは間違っているものばかりだったから。

「俺らはAのことが好き。大好き。たまにケンカとかしたり、迷子になったAを探さないといけなくなっても、それは変わらない。」

「めー、わく、いっぱい…うる、さい…おそ、い。……あのこ、みたい、に…ひっぐ……しせ、つ…いっ、た、ら…めーわ、く……かけな、かった…。」

「施設に行ったら俺らが会えなくなるから俺がヤダ。俺はAに会いたい。前にも言ったよね、3人でひとつだよって。」

3人でひとつ。
その言葉にAはビクッと反応すると、振り返り、俺の制服を握りしめる。
それはきっと、俺がここにいるということを確認する為。

今Aは『怖い』と向き合っているから。
戦おうとしているから。

その勇気を、俺から貰おうとしているから。

「誰も迷惑だなんて思ってない。むしろ頑張ってるAはすごいな、ってみんな思ってる。

それにさ、Aは何も返せてないって言ってたけど、家族とか幼なじみって、そこに居てくれるだけですごく嬉しいの。
だから、俺らの傍に居てくれて、すごく、嬉しい。」

Aはまだ不安なようで、俯いたままだった。
それでも俺の制服を離そうとはしなかった。

ぽたぽたと静かに涙をこぼした。
そしてゆっくりと顔を上げると、俺の目を見る。
その目は涙にぬれていた。
少し経って、Aが口を開く。

「わ、たし…すき……いっ、て…いい、の？」

それは俺へ許可を貰おうとしているようで。

許しをもらおうとしているようで。

必死に俺にすがりつこうとしているようで。

俺は深く息を吸い、呼吸をする。
そして、Aと向き合う。

「いいんだよ。」

『許された』『許可をもらえた』その安堵からか、今まで耐えてきたものが溢れてきたかのように涙が溢れる。

「う、あ…うぁぁぁぁん！！！

す、き…！すきだ、よ…！けん、まも…！て、つにーも…！まま、も…！ぱ、ぱも…！みんなっ…！！みんな……だい、すっ…き！！！

こわ、くて…ごめっ…なさっ…い…！！で、も…すき、なん、だよ…！！…ゆう、き…なく、て…ご、めん…なさ、い…！！」

初めてのAの『大好き』。

それはすごく不器用で、他の人から見たら聞こえにくいものだと思うけれど。

「俺も、大好きだよ。」

それでも、Aが言ってくれた言葉は俺の心を満たしてくれた。