俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ21)

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天才じゃない22 ページ21

研磨とふたりきりの帰り道。
鉄にぃはもう少し練習していくらしい。
多分私の歩く速度なら私が家に着くまでには合流できるだろう。

この前の事件から研磨の様子がおかしい。

それはきっと、『私の本音』を聞いてしまったから。

「…墓場まで持って行こうと思ってたのになぁ。」

おどけて言うも、研磨の表情は硬い。
黙り込んでいた研磨が口を開く。

「……そんなに、怖いの？」

「……うん。鉄にぃ居ないから言うけどさ、毎日不安だよ。…私はみんなに、迷惑しかかけてないし、家では聞きたくない声も聞こえるし。

『ありがとう』って言える相手が居るのは、嬉しい。けど、その『ありがとう』とやってくれたことが釣り合ってるかは、別。

何も出来ない、お金も受け取ってくれない。……そんな私に、生産性のない私に、生きてる意味って、ないって思ってた。」

「思ってた？」

『思ってた』、それは過去の言葉。
今はそうではない、という言葉でもある。

そう、今は違うんだ。

「この前、鉄にぃ起こす時どうやって起こせばいいのって考えてた。バレーボール吊るしたら起きる？って聞いたら、Aが自分を起こそうとしてるのを見てるのが好きだから、って。

初めてだったんだ。
ストレートに、『私自身のことを』好きって言ってもらえたの。

生きてていいのかな、って悩んで、考えて。今は、少しだけ生きる方に傾いてる。
私って単純で馬鹿だからさ。直ぐにコロッと変わっちゃうんだよね。…バカみたい。」

俯きながら話すそれはただの独り言のようで。
研磨に聞かせるんじゃなくて、自分ひとりで悩んでいることを外に出しているだけで。

どうしようもなく、惨めになる。

そんなことを知ってか、知らずか。
研磨は再び口を開いた。

「俺は、Aが生きててくれて、すごく……すごく、嬉しかった。安心した。だから、それだけAは俺にとって大切な存在で。……いつもは言わないけど、俺も、みんなもAのこと大好きなんだよ。」

「そういうの、やめて、欲しい。…自分に、生きてる価値も、意味も…権利もあるって……勘違い、しちゃう、から。」

やばい。

何もしてないのに。

何もされてないのに。

涙が落ちないように、堪えることしか出来ないだなんて。

情けない。

「ごめ、ん…あと、ちょっと……した、ら…元のっ…わた、しに……もど、る…か」

ぷつん。