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天才じゃない2 ページ3

黒尾side


なんとなく喉が乾いたから、コンビニに寄った。

月明かりに照らされた川が綺麗だったからコースから少し外れて走った。


さて、問題はここから。



Aが『絶対行くなよ。』と言われた犬飼ってる家の近くを通るか、通らないか。

ただいまの時刻、寄り道し過ぎて日付が変わりそう。
つまりヤバい。

犬飼ってる家の近くは家までの近道。

そろそろ寝ないとガチで起きれない。


「……少しだけならセーフ…だよな?」


あそこを全力疾走する。
そんで後は歩く。
そうすれば体力的にも、時間的にもセーフ。

でもAが絶対に近づくなつったの初めてだし……。


少しの不安と時間が段々と俺を焦らせる。


そして走り出そうとした瞬間、誰かからの着信にビビる。
着信は、Aからだった。
ピッと通話ボタンを押す。


「いきなりビビったわ。で、何。」


俺の声を聞くとAはどこか安心したようなため息をついた。
遅くなったから不安になってんのか?


「『……鉄にぃ、今どこ。』」

「んー、川の橋の上。大丈夫だって、今直ぐ帰るから。」

「『いや、遅くていい。なんなら授業中寝てもいいし、最悪学校休んでもいいから遠回りして帰ってきて。』」

「はい?」


何言ってんだ、こいつ。
え、本物?本物だよな??
何、俺おばけと話してんの?


「いやいやいや!ぜってー俺は騙されない!Aが学校休んでもいいなんて言うわけねぇし!!」

「『うっさい!!あー、じゃあ歩いて直ぐのコンビニで10分待機!!じゃ!!!』」


プツンと勝手に切られた電話。


「なんだアレ…。寝ぼけてるとか?ま、いいか。」


寝坊してもいいし、なんなら休んでもいいらしいし。
こっちとしてはラッキーとしか思えない条件に、鼻歌を歌いながらコンビニへ身体を振り返る。


コンビニで待つこと約5分、1台のタクシーからAが降りてきた。


「……はぁ!?あの電話本物だった」

「うるさいさっさと乗れ!」

「は?ちょ、お前」

「いいから!!」


怒っているような、どこか焦っているような口調に今度は俺がビビる。
俺を無理やり乗せると、とんでもない声が聞こえてきた。


「うんてんしゅさん!さっきとおなじみちをとおってください!はやくね!おばあちゃんがしんはいしちゃうから!」

「ぶっ!!!」


どこからどう見ても完璧な小学生。
チビッ子用のジャージを着てこいつは一体何を言ったのか。


Aは1度も俺を見なかったことに気が付かなかった。

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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時

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