俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ16)

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天才じゃない17 ページ16

研磨side

「おじさん。多分心配すると思うからお兄ちゃんに電話してもいい？」

お兄ちゃん、クロに電話をしてもいいか。

そんなこと言ってはいけないのは当たり前なのに。

「A、あまり余計なこと言わない方がいい。」

「スピーカーモードにしてお話するし、ここについては話さない。だから、いい？」

「わかった。ただし、お前らの携帯は俺が預かる。」

「ありがとう。」

なんで、あんな銃を構えてる奴相手にそんなに話せるの。
やめてと言いたいけれど、Aの要求で俺らが自由になっているのも事実で。

臆病な俺は黙っているのが精一杯で。

「電話ボタン押して、鉄にぃって人をタッチして。」

男がAのスマホを触る。
男は最初より警戒の色が薄くなっているように見えた。
男がスマホを持ち、俺らが近づいて通話をする形だ。

コールが鳴る。

「『はーいもしもし、黒尾でーす。』」とのんきなクロの声が聞こえる。

「残念ながら私も黒尾だよ。今日多分お泊まりしてくる。」

「『は？どこに』」

「研磨も一緒に！じゃあね！」

Aが通話を切ろうとしたのを俺が止める。

「……すいません、俺が変わってもいいですか。」

たった一言。
その一言だけでもとんでもない圧がくる。

「もしもし。クロ、俺。Aがすごいぼやかしてるけど、俺らふたり人質中。外には出ない、場所も言えない。けど、しばらくの安全は…Aが、命…かけて…保証、した……。」

俺は、何も出来なかったけど。

電話越しにクロが「『はぁぁ！？』」と反応する。
そうだよね、それが当たり前だ。

「『けんっ…おまっ！どゆこ』」

「そこまでだ。」

男がプツンと通話を切る。

前のAみたいに、安否も行方もわからない時よりはマシだとは思うけど…でも……。

「おじさん、ありがとう。」

「……。」

にこにこ笑うA。

黙り込む男。

それでも、この自由にAの命がかけられてることに変わりは、ない。