俺らの幼なじみは天才じゃない (ページ15)

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天才じゃない16 ページ15

研磨side

Aに守ってもらったことなんて、数え切れないほどある。

小学生のカツアゲとか、中学校での嫌がらせとか。
他にも色々な時、絡まれたりした時もいつの間にかAに守られていた。

『守られていた』ことはたくさんある。

でも、俺が『守れた』ことは、1度もない。

「クソ！」

「うっ！」

投げ捨てられた俺に「研磨。」とAが手だけで近づいて来る。

「研磨、大丈夫？」

「…虎の流れ玉より全然痛くない。」

実際虎の流れ玉はすごく重くて痛い。本当にすごく。
俺よりずっと筋力も体力もあるから。

そう答えると「違う。」とAが首を振る。

「それもだけど、呼吸。過呼吸になってたでしょ。顔色悪い。」

「……あ。」

そうだ、さっきまで俺は…。

呼吸が難しくて頭が痛かったはずなのに、気がついたら呼吸は元に戻っていた。

Aは驚く俺に対し、首に手を当てる。
おそらく脈拍を測っているのだろう。

俺は肉体的、視覚的だけじゃない。

『精神的にも』Aに『守れられていた』んだ。

悔しくて下を見る。
それがきっとAにバレていると知っていても。

「おじさん。私は足が片方ないし、研磨はそんな私のサポートをしないといけない。だから私たち大人しくしてるから、ここで自由にさせて。」

「…それを俺が信じるとでも思うか。」

銃が再びAの眉間に向けられる。

「A！もういいから、はやく」

「おじさん、私たちはおじさんに手を出さない。
銃を奪ったりも、隠したりも、おじさんを攻撃もしない。
…だから、信じて。

もし、私たちが約束を破ったら、

私のこと殺していいから。」

「……は。」

なに、言ってんの。

「…わかった。」

男はAの要求を飲んで、静かに銃を下ろした。

「だから研磨、おじさんの銃奪ったり、暴力振るったりとかそういうのダメだからね。」

「……んの。」

「…どうしたの？」

「何勝手に命かけてんの！！死ぬかも、死ぬかもしれ、しれないんだよ！？なの、なのに！なんで！！」

「研磨、しー。私たちは大人しくしてるから…ね？」

Aはチラリと男の方を見た。
『だから、騒がないで。』そう言っているように感じた。

「研磨、大丈夫。」

「……何がさ。」

「私、ちゃんと最善策を選んでるから。誰も死なないし、死なせないよ。」

笑うAがどこか危ない存在に感じた。