天才じゃない13 ページ12
『好き』とは。
好意を示す言葉……と認識している。
迷惑かけてるのに。
消えないと、って思ってるのに。
いない方が幸せなんじゃないか、って思うのに。
なんで、あんなこと…言うのかな。
…生きてていいって、勘違いする。
わからない。
生まれて初めて、心の底から教科書にも本にも書いてない『わからない』に遭遇した。
急に出ていって、鉄にぃも驚いただろうから学校着いたら話そう。
あれは『鉄にぃがそんなこと言うから驚いただけ。』って。
嘘は言ってないからセーフ、だと思う。
「鉄にぃおはよ。」
鉄にぃは私より遅く登校しているのに私と同じぐらいの時間に着く。
だって、私は足に負担がかからないようにゆっくり歩いてるから。
帰り道、研磨と鉄にぃに私のスピードに合わせてもらうのが本当に申し訳ないと思う。
「ごめん。鉄にぃがそんなこと言うとは思ってなくて、ちょっと驚いただけ。」
「……本当に?」
いつもなら誤魔化せるはずの言葉を鉄にぃは再び聞いてくる。
でも、これは嘘ではない。
「本当に。……少し、驚いただけ。」
自分がそんなことを言われる存在になることになっただなんて。
驚いた、だけ。
鉄にぃは首を傾けると、「うーん?」と悩みホームルームの時間になりかけていたので急いで私を片手抱っこして教室へ向かった。
片手抱っこはプライドが許さない、けど、嫌いではない。
「ん。鉄にぃありがと。」
「どーいたしまして。」
いつも思うんだ。
『ありがとう』を言える相手がいるって幸せだなって。
でもそれは『ありがとう』ですむものなのか、わからないんだ。
教室に入り、自分の席に座る。
窓側の席の私がゆっくりと歩いていくのを誰も否定も何も言わない。
それは中学で思い切り言ったからだと思うけど。
自分の席で荷物を下ろして座る。
そしてたまたま外を見ると、私の目が見える。
そこには『嫌悪』『困惑』『謝罪』。
そして、必死に『生きてる価値』を探そうとしている私が見えた。
「……当然、か。」
私はいつか、『生きている価値』を見つけることができるのだろうか。
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作者名:ドク | 作成日時:2022年8月5日 17時