性別不明の歌い手は男性恐怖症でした。【さとみ君】

第１９話 ページ25

「これ、中にカスタードクリームが入っていて。

　 上に苺とミントをのせました。

　 さとみさん、コーヒー飲めるんだったらいいかなって・・・」

　 鏡花から差し出された白いお皿を受け取る。

　 苺の上に掛かっている、ゼリーみたいなのがキラキラしていた。

　 すごくきれいだった。

　「甘いの、好きかどうか分からないので・・・

　 そこまで甘くはしてないです・・・」

　「いただきます。」

　 フォークでタルトを切ると、サクッという音がした。
　
　 一口入れてみる。

　「おぉ、めっちゃ美味い。」

　「よかったです・・・」

　 鏡花はお盆を持ったまま、俺の向かい側に座った。

　「葉月ちゃん以外の人に食べてもらうのは初めてで・・・

　 葉月ちゃんは甘いのが好きなんです・・・

　 でも、分からなかったので。」

　「ありがとう、めっちゃ嬉しい。」

　「そ、それならよかったです・・・」

　 鏡花は照れているのか、耳まで真っ赤だった。

　「鏡花、聞きたかったんだけどさ。」

　「はい・・・」

　「まだ、俺に原因を話す気はない？」

　「・・・」

　 異性恐怖症を治す、きっとこれは大変なことだ。

　 俺は鏡花の色々な事を知りたい。

　「・・・言った方が、いいですよ、ね・・・」

　「無理強いはしない。鏡花のタイミングでいい。」

　「・・・分かりました、少し、重くなってもいいですか？」

　「うん、どんな話でも聞く。」

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