さんさん ページ34
コウ「…俺を疑っているのか。」
『…まーね。
でも、今の反応で違うってわかったよ。
元々、犯人の目星は付いてたし…。』
コウ「…!?
おい、お前今、犯人の目星は既に付いていると言ったな?」
『は?いや、まぁ…うん。
…何?教えろって?』
コウ「…いや、いい。」
『…へぇ?』
俺がそう答えると、琴乃は目を大きく見開きつつも、そんな微妙な反応を見せた。
そこに、さっきのような異様な威圧感はない。
…そんなにこの回答が意外だったのか。
コウ「そろそろ、狼裁判が始まる頃だろう。
さっさと付いて来い、琴乃。」
『え、ああ、うん。
先行ってて。』
コウ「…お前も大概、マイペースなんじゃないか。」
『よく言われるよ。』
琴乃はそれ以来、黒板に書かれた文字を見つめたまま、動く気配がなかった。
仕方なく、俺は琴乃をおいて、リビングへ向かった。
否、向かおうとした。
『………本当の自分、ねぇ。
なんだったかなぁ、本当の自分って。』
突拍子もなく彼女が呟くから、思わず振り返ってしまった。
しかし、当の本人は、俺がまだ教室内に居ることは疎か、自分の口から言葉が出た事にすら気がついていない様子だった。
彼女の、本当の姿。
確かに、違和感はあった。
ただの高校生が、こんな状況に置かれてもあんなに飄々としていられるか?
俺たちに見せている彼女は、本当の彼女ではないのかもしれない。
そんな呑気なことを考えていると、アナウンスが鳴る。
メリー、とか言ったか。そいつの声だ。
どうやら、狼裁判が遂に始まるらしい。
そこで、気がついた。
今の今まで、これから始まる狼裁判とやらのことを、微塵も考えていなかった自分に。
彼女の事を知りたいと、少しでも考えてしまった自分に。
コウ「…頭がおかしくなったのか、俺は。」
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作者名:ハチミツころっけ | 作成日時:2024年3月15日 16時