黒猫8 ページ10
苛々する、嗚呼苛々する。
黒猫は俺にばかりちょっかいをかけてくるし太宰はそれを軽蔑したみてェに見てくる。
挙句の果てに俺のせいで任務を黒猫一人に任せることになっちまう始末だ。
「任務の詳細だ。決行日は今日。せいぜい頑張ってくれたまえ。」
太宰が書類を黒猫の方に投げる。纏められていないのでパラパラと書類が舞う。
「酷いことなさるのね?」
黒猫はくすくすと笑いながらしゃがんで落ちた書類を丁寧に拾う。
白く細い指で拾う様すら優雅で少し見惚れてしまう。
…こいつは優雅だ。一つ一つの所作や言葉遣いが危うく喰われて呑み込まれて仕舞いそうな程。
…だからと云って此奴に心を許す訳でも此奴の印象が善い訳でもないけれど。
「ふぅん、成程…。あら?…まァいいわ。」
何時のまにか集め終わり書類を読み込み出している黒猫。光る目が書類を隅々まで追い尽くしていた。
そして暫く…と云っても5、6秒位だが、考え込んだ後、にっこりと笑った。
「作戦、決まりましたわ。こんな簡単な任務、確かに欠伸が出そう」
「…けっ、マフィアはそんな温くねェぞ」
「ご心配どうも。生憎、マフィアが温ぅく感じて仕舞う程の地獄にいた事もあるの。でもそうね、足元すくわれないよう気を付けさせてもらうわ」
黒猫は月のように輝く目を細め何処ぞの令嬢みたいにスカァトを摘みながらお辞儀をして何処かに消えてしまった。
「…なぁ、彼奴どうおもう?」
「不快以外の何者でもないね。」
「だよなァ…」
**
そして其の晩。
俺と太宰は黒猫の任務の行く末を見守る為裏切り組織の基地の前に立っていた。
暫くすると足音もなく黒猫が現れた。
夜だというのにいやに洒落た日傘をさして颯爽と俺らの前に出る。
「まァ、心配してくださってるの?どうも有難う、嬉しいわ。」
「勘違いすんな、手前が死んだあと死体を回収する為と、こいつらをぶっ潰す為に来ただけだ」
俺が悪態をつくと、くす々と笑って此方を見つめた。
闇夜に光る月と黒猫は、恐ろしい程よく似合った。
「では、行って参ります」
そう云い彼女は正面から堂々と入っていった。
…そこから先はよく覚えていない。酷い叫び声が聞こえたかと思うと、ものの数分で涼しい顔をして入った時と同じ見た目の彼奴が出てきた。
血はついておらず、髪すら乱れてない。
あの中で、何があったのか。
室生Aという女は、一体、どういう人物なのだろう
夜の闇と彼女への謎は、深まるばかりだった。
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作者名:まるてん x他1人 | 作成日時:2018年8月2日 10時